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百万円と苦虫女
（2008年 日本）（上映時間2時間1分）
監督・脚本：タナダユキ
出演：蒼井優、森山未來、ピエール瀧、竹財輝之助、齋藤隆成、笹野高史、
佐々木すみ江、嶋田久作、モロ師岡、石田太郎、キムラ緑子、矢島健一、斎藤
歩、堀部圭亮、平岩紙
＊ シネセゾン渋谷、シネ・リーブル池袋ほかにて公開
ホームページ http://www.nigamushi.com/
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＜ストーリー＞
短大を卒業後、就職できずにアルバイト生活を送る21歳の佐藤鈴子（蒼井優）。
ひょんなことから前科者となり、家に居づらくなった彼女は、100万円を貯める
ごとに引越しを繰り返す生活を始めるのだが……。
＜レビュー＞
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ダメだけどひたむきなヒロインに、心地よさを感じるロードムービー
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「自分探し」って、なんだか怪しくありませんか？ 「自分なんて、探さなく
なってここにいるじゃん！」と思っていたら、予告編でこの映画の主人公・鈴
子が同じセリフを言っていたので、思わずウレシクなって観に行きました。
蒼井優演じる鈴子は、これといったとりえもなく、不器用で、おまけに意志の
弱い女性です。それでいて追いつめられると、めいっぱいブチ切れてみせたり
します。
そんな彼女がささいなことから、前科者（といっても罰金20万円）になってし
まいます。家にいづらくなり、"百万円貯まったら出て行きます"と宣言した鈴
子は、予定通りに百万円を貯めて実家を出て、最初は海の家、次は桃の栽培を
する農家、そして地方都市のホームセンターとバイトをしながら旅をします。
そこで様々な出来事に遭遇する姿を、ユーモアを込めて描いたロードムービー
です。
鈴子の旅も「自分探し」の旅と言えるかもしれません。でも、ありがちな「自
分探し」とは明らかに違います。そんなに簡単でも、オシャレでもありません。
鈴子は人と関わることが面倒で、いつも逃げてばかりいます。ところが、なぜ
か行く先々で厄介な人間関係に巻き込まれてしまいます。そこで、百万円が貯
まるとサッサとよその土地へ行ってしまうわけです。
とはいっても、彼女とて今のままでいいとは思っていません。だからこそ旅に
出たのでしょう。しかし、そう簡単に自分が変わるはずもなく、「こんなこと
でいいのか？」と思いつつも旅を続けます。そして、そんな彼女にもついに転
機が訪れます……。
「なんとかしなくちゃ」と思いながらどうにもならず、同じことを繰り返して、
苦しんで、悩んで、そしてある日、どうにか少しだけ変化が訪れる。それこそ
が本当の「自分探し」。人間が成長するというのは、そういうことではないで
しょうか。鈴子を観ていて感じました。
感心するのは、鈴子がとても魅力的に描かれていること。頼りないのに、同時
に芯の強いところもあって、不思議な存在感を持っています。不器用だけど彼
女なりに一生懸命に生きているから、共感できる部分が多いんです。こういう
複雑な女の子は、蒼井優だからこそ演じられたのではないでしょうか。
監督＆脚本は、『赤い文化住宅の初子』の監督＆脚本や『さくらん』の脚本な
どで売り出し中のタナダユキ。
映画の冒頭で、拘置所から出た鈴子が思わず口ずさんだ歌は、かつての人気深
夜番組「11ＰＭ」のテーマソング「シャバダバシャバダバ……」。「シャバ」
に出たことにかけたわけですが、その瞬間から何ともユル〜イ空気が流れます。
すでにそこから、この映画独特の空気が漂っています。
鈴子が手作りのカーテンを持って旅をするところとか、ディテールの組み立て
方も巧いんですよね。
後半は、鈴子と一人の男性のちょっぴり切ないドラマが展開されます。そこに
鈴子とイジメられっ子の弟との心の交流も織り込まれて、奥行きのある展開に
なっています。
ラストも印象的。ちょっぴりほろ苦いけれど、鈴子の新たな旅立ちにはふさわ
しい余韻のある結末だと思います。
不器用で欠点だらけだけど、自分のペースで前向きに生きようとしている鈴子。
そんな彼女の姿が、とても心地よい映画でした。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（設定はユニークだけれど、リアルで共感できるロードムービー。なかなかの
佳作です。）
（ぽち）
〔鑑賞データ〕
2008年7月19日（土）シネ・リーブル池袋にて。午後4時の回
[「ひ」のページ] |
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