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人間失格
（2010年 日本）（上映時間1時間57分）
監督：荒戸源次郎
出演：生田斗真、伊勢谷友介、寺島しのぶ、石原さとみ、小池栄子、坂井真紀、
森田剛、石橋蓮司、室井滋、大楠道代、三田佳子
＊角川シネマ新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://www.ns-movie.jp/
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＜ストーリー＞
津軽の資産家を父に持つ美貌の青年、大庭葉蔵（生田斗真）は、幼い頃から周
囲に違和感を感じて育つ。上京して高等学校に入った彼は、同じ画塾に通う遊
び人の青年・堀木（伊勢谷友介）と知り合う。彼によって遊びを覚え、酒に溺
れ、放蕩生活に浸るようになった葉蔵だが、なぜか女には不自由せず、次から
次へと女性遍歴を重ねていく。しかし、そんな生活に徐々に虚しさを募らせて
……。
＜レビュー＞
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破滅していく主人公を描いた独特の空虚な世界
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有名な太宰治の小説の映画化。監督の荒戸源次郎は、鈴木清順監督の『ツィゴ
イネルワイゼン』などの製作を手がけた後、監督デビューとなった『赤目四十
八瀧心中未遂』で数々の賞を受賞した鬼才です。
ストーリー展開はほぼ原作どおりのようです。津軽の資産家の家に生まれ、幼
い頃から周囲に違和感を持ちつつ育った主人公の葉蔵が、上京して悪友に影響
されて破滅的な生活に足を踏み入れるものの、なぜか女性にはモテて様々な女
性と関係を持つというお話。その過程で、仕事のことや様々なことで心に空虚
さを抱え、心中を試みたり、薬中毒になってしまいます。まあ、典型的な太宰
治の世界ですよね。
私は、『赤目四十八瀧心中未遂』を観ていないのでなんともいえないのですが、
荒戸監督の才気は十分に感じさせます。細部までこだわった映像、特にイメー
ジ的な映像が強烈です。詩人の中原中也が光の雨に包まれるシーン、葉蔵と彼
を世話する高齢の女性とのシーン、ラスト近くで列車の中に主要な登場人物が
勢ぞろいするシーンなど。
虚無的な空気に包まれた独特な世界の中で、戦争をはじめとする当時の時代性
を巧く出しながら、器用に立ち回れずにどんどん堕ちていく葉蔵を描いていき
ます。最近の日本映画では、異質な世界といえるかもしれません。
ただし、主人公の心の奥底までは迫りきれていない感じもました。主演の生田
斗真はかなりの美形ですが、演技力はどうなんでしょう。いったいどうしてあ
あいう破滅型の人生を歩んだのか。彼の美形ぶりに乗っかりすぎて、その源泉
までは描ききれなかった感じです。後半で、妻の秘密を知ったあたりはそれな
りに彼の心の中が見えてきたのですが……。
もしかしたら、それは意図したもの？ 葉蔵を破滅型の人生を歩んだ生身の人
間というよりも、透明で存在感のない空気のような存在として描いたのでしょ
うか。それを通して彼の心の空虚さを描こうとしたのかもしれません。そうい
えば、あれだけ女性遍歴を重ねながら、生々しいラブシーンなどはほとんど登
場しません。
その辺の本当のところはよくわかりませんが、個人的には物足りなさが残った
のは事実。
それでもハッとさせられるシーンはいくつもあるし、独特の世界は見応えがあ
りました。観終わった後で、後々まで何かが残る不思議な映画です。
寺島しのぶ、小池栄子、坂井真紀、室井滋、大楠道代、三田佳子など、葉蔵と
関わる女優陣はみんな圧巻の演技。なかでも石原さとみが、あんな役をやると
は。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（主人公の内面があまり見えず期待したほどではなかったものの、独特の映像
世界はそれなりに見応えがありました。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年2月21日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午前11時45分の回
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