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ノーボーイズ，ノークライ（THE BOAT）
（2009年 日本・韓国）（上映時間1時間54分）
監督：キム・ヨンナム
出演：ハ・ジョンウ、妻夫木聡、チャ・スヨン、徳永えり、イ・デヨン、キ
ム・ブソン、貫地谷しほり、柄本佑、あがた森魚
＊シネマライズほかにて全国公開
ホームページ http://www.noboysnocry.com/
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＜ストーリー＞
オンボロのボートで韓国から日本へ密輸品を運ぶヒョング（ハ・ジョンウ）。
日本で成功したボギョンおじさんに荷物と手作りキムチの壺を届けていた。あ
る時、彼は自分が麻薬の運び屋をやらされていたことを知る。それからまもな
く、ヒョングは同じくボギョンの手下の亨（妻夫木聡）とともに、人質として
誘拐された韓国人女性チスの運搬を命じられる。亨（妻夫木聡）はチスが約束
する多額の報酬を目当てに、ヒョングと共謀して彼女の父親捜しを開始するの
だが……。
＜レビュー＞
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孤独と重荷を背負った２人の男が織りなす友情のドラマ
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『ジョゼと虎と魚たち』『メゾン・ド・ヒミコ』『天然コケッコー』の渡辺あ
やが脚本を担当した日韓合作映画。繊細な心理描写など、根底に流れるものは
過去の映画と共通しますが、今回は韓国人監督ということもあって、少しゴツ
ゴツした感じがします。
登場するのは、韓国人のヒョングと日本人の亨。ヒョングは幼くして母に捨て
られ天涯孤独。日本で成功したギャングの男に「お前は息子同然だ」と言われ、
彼のもとで働いています。
一方、亨はだらしない妹と、彼女の３人の子ども（しかも、1人は重い病気）、
そして認知症の母親を抱えて苦しい生活を続けています。
この設定が秀逸です。家族のないヒョング、家族を抱えた亨。一見正反対の２
人ですが、それぞれに自分の境遇に苦しみ、いらつき、見通しのない毎日を送
っているのは同じです。
そんな２人が、誘拐された会社重役の娘チスの運搬を命令されたことから、運
命が大きく変わり始めます。「私のパパを見つけたら大金をやる！」と言い出
すチス。それはボスを裏切る行為。しかし、家族のために金が必要な亨はその
申し出を受け入れ、ヒョングを引き込んで大勝負に打って出ます。
最初はお互いのことをよく知らず、ギクシャクしていたヒョングと亨が次第に
心を通わせていくようすが、繊細な心理描写によって描かれます。カラオケ大
会に飛び入りして、「アジアの純真」を歌うシーンは彼らの心理を的確に表現
した名シーンです。ヒョングが亨の家族たちと食事をしているところを、亨が
見つめるシーンなども心に残ります。
クライマックスには、２人にとって大きな試練が待ち受けています。自分を犠
牲にしてヒョングを救おうとする亨。それに対して、自分１人で運命に立ち向
かおうとするヒョング。
ラストの人魚のエピソードが切なさに満ちています。同時にある種のすがすが
しさも感じられるエンディングです。
『チェイサー』の猟奇殺人犯とは一転、様々な感情を秘めた人間味にあふれた
役を演じたハ・ジョンウ。心の奥底ではボスのことなど信用していないのに、
それでもどこかで信じたいという微妙な心理、あるいは自分を捨てた母親に対
する屈折した気持ちなどをよく表現していました。
そしてふだんは冷静ながら時に感情を爆発させる演技が光った妻夫木聡。特に、
甥っ子たちの玩具を片付けながら怒りが爆発して自転車を蹴りつけるシーンや、
元恋人に自分の思いを拒否されたシーンなどが印象的でした。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（２人の男の友情が見応え十分。ハッピーエンドではないけれど、すがすがし
さが残ります。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2009年8月27日（木）シネ・リーブル池袋にて。午後1時40分の回
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