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ノルウェイの森（NORWEGIAN WOOD）
（2010年 日本）（上映時間2時間13分）
監督・脚本：トラン・アン・ユン
出演：松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子、高良健吾、玉山鉄二、霧島れいか
＊TOHOシネマズスカラ座ほかにて全国公開
ホームページ http://www.norway-mori.com/
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＜ストーリー＞
高校時代に親友のキズキ（高良健吾）を自殺で失ったワタナベ（松山ケンイ
チ）は、卒業後に東京の大学に進学する。ある日、ワタナベはキズキの恋人だ
った直子（菊地凛子）と偶然再会する。次第に惹かれ合う2人だったが、やがて
直子は心のバランスを崩して京都の療養所に入院する。直子の病状を心配する
ワタナベだが、ちょうどその頃、直子とは対照的な明るい女子学生の緑（水原
希子）と出会う……
＜レビュー＞
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漂う孤独と虚無感。村上春樹の世界を忠実に映像化
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『青いパパイヤの香り』『夏至』のトラン・アン・ユン監督が、村上春樹の世
界的ベストセラー小説を映画化。
舞台は1970年前後。主人公ワタナベは、高校時代に親友のキズキを自殺で失う。
東京の大学に進んだ彼は、キズキの恋人直子に再会。2人は付き合うようになり、
直子の20歳の誕生日に関係を持つ。だが、直子は次第に精神を病んで療養所に
入る。そんな中、ワタナベは大学でみずみずしさにあふれた緑という女子学生
と出会う……。
ワタナベと自殺した親友の彼女だった直子、そしてワタナベに好意を持つ緑と
の恋愛関係を軸にしたドラマ。
過去のトラン・アン・ユン監督の作品と比べれば、かなり異質な感じです。若
者のセックスに関する話がかなりのウエイトを占め、エロいシーンもけっこう
あるものの、官能的な感じはあまりありません。
登場人物の思いもそれほどリアルには伝わってきません。当時の学生運動に距
離を置いていたワタナベたちの孤独や虚無感などは、それなりに描けているも
のの、それ以上のものはありません。ワタナベ、直子、緑、いずれの心情もツ
ッコミ不足。恋愛ドラマとしても、青春ドラマとしても中途半端な感じです。
ただし、村上春樹の世界を忠実に映像化したという点では、良くできた映画で
はないでしょうか。（初期の作品はほとんど読んだものの、途中で飽きてこの
作品も読んでいない自分が言うのも何ですが……）
展開するのはかなりイタい話。しかし、若者らしい激しさも身もだえするよう
な苦悩も見せず、自分の身に起きた出来事を他人事のように語る主人公をはじ
め、まるで風景のひとこまのように見える登場人物たちを淡々と、一歩引いた
ような感じで描いています。
おそらく作品中のものをそのまま使っていると思われるセリフも、原作の雰囲
気を伝えています（何の先入観もなしに聞くと、うわっ滑りで現実味のない空
疎なセリフにしか聞こえないのですが）。
後半のショッキングな出来事の前後の描き方は、いかにもトラン・アン・ユン
家督らしいタッチ。音楽の使い方といい、リー・ピンビンの美しい映像といい、
印象的なショットが続きます。
しかし、やっぱりそこもセックスなのか……。キミたちにはセックスしかない
のか？原作も、こんなにセックスの話ばっかりでしたっけ？
松山ケンイチの脱力系の演技、菊地凛子の迫真の演技などはそれなりに見応え
があります。村上ワールドを再現した点で、村上作品のファンなら楽しめるの
かもしれません。ただし、個人的には、ほとんど胸に響くものがなく、あまり
心に残らない作品でした。
≪ぽちの満足度≫
★★☆☆☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（個人的にはかなり物足りない映画ですが、村上作品のファンは観る価値があ
るかもしれません。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年12月11日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時15分の回
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