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おとうと
（2010年 日本）（上映時間2時間6分）
監督：山田洋次
出演：吉永小百合、笑福亭鶴瓶、蒼井優、加瀬亮、小林稔侍、森本レオ、芽島
成美、田中壮太郎、キムラ緑子、笹野高史、ラサール石井、佐藤蛾次郎、池乃
めだか、小日向文世、横山あきお、近藤公園、石田ゆり子、加藤治子
＊丸の内ピカデリーほかにて公開
ホームページ http://www.ototo-movie.jp/
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＜ストーリー＞
東京郊外で薬局を営む高野吟子（吉永小百合）は、夫を早くに亡くし、女手ひ
とつで一人娘の小春を育ててきた。ある日、エリート医師との結婚が決まった
小春の結婚式に、音信不通だった吟子の弟・鉄郎（笑福亭鶴瓶）が突然現れ、
泥酔して披露宴を台無しにしてしまう。鉄郎は周囲に責められるが、それでも
吟子は彼をかばう。だが、しばらくして、鉄郎の恋人だと名乗る女が借金返済
を求めて吟子のところにやってきて……。
＜レビュー＞
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姉と弟の切っても切れない縁を通して理想の人間関係を描く
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山田洋次監督の最新作。10年ぶりの現代劇です。
夫に先立たれて、女手ひとつで娘・小春を育ててきた主人公の吟子。昔からの
悩みの種は、出来の悪い問題児の弟・鉄郎。ある日、小春とエリート医師との
結婚式に突然現れた鉄郎が大暴れ。式をめちゃくちゃにしてしまいます。その
後も、問題を起こす鉄郎とついに縁を切ると宣言する吟子でしたが……。
いまどきこんな映画は珍しいです。登場人物に悪人はゼロ。問題児の鉄郎にし
ても、酒、博打、金にだらしないものの、悪人というわけではありません。
オール善人たちによる何のヒネリもない正攻法のドラマが延々と続いていきま
す。このあまりにもお気楽な世界に、正直、最初は違和感を感じてしまったの
でした。
セリフも「いまどき、そんなこと言わないだろう〜？」てな感じで、リアリテ
ィーはまったくナシ。
しかし、よくよく考えれば、これはまさしく山田洋次ワールド。過去の山田作
品もそうでしたが、リアルな現実を突きつけるというよりは、失われたもの、
あるいは失われつつあるものを描いて、「本当はこうあるべきでは？」と理想
を提示しているのです。
フーテンの寅さんだって現実味はゼロだけど、「ああいう人がいたらなぁ」と
思わせますものね。この映画の吟子と鉄郎の関係は、まさしく寅さんと妹さく
らの関係そのままではありませんか。
だから、この映画は強固なヒューマニズム精神に基づいた、ある種のファンタ
ジーとして観るべきだと思います。そうやって観ると、なるほどよくできてい
ます。泣いて笑って感動できる人情あふれるドラマです。
主人公の吟子は、弟の鉄郎に対して、時には冷たい態度をとったり、怒ったり
するものの、その根底ではあくまでも彼の人間性を信じ、手を差し伸べようと
します。それは山田監督自身の人間に対する信頼をそのまま反映させているよ
うに思えます。
後半、鉄郎は病に倒れ、施設に収容されます。その民間施設も理想の施設。そ
こに関わるスタッフたち、あるいは吟子の住む町の人々など、周囲の人たちを
含めて、山田監督の「こうあるべきだ」という強い思いが感じられます。
鉄郎役の笑福亭鶴瓶が最高のキャスティング。吉永小百合とのコンビは一見不
似合いに思えるけれど、実際はなかなか味のあるコンビです。
強い信念に基づいて理想の世界を描いた映画。現実味はありませんが、泣いて
笑って感動して、すがすがしい気持ちになれそうです。こういう映画ばっかり
だったらイヤですが、逆になくなるのも困る気がします。特に今のような世の
中ではね。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（ある種のファンタジーとして観ることをオススメします。人間としてあるべ
き姿が見えてくるかも。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年2月14日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時の回
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