|
パラノイドパーク（PARANOID PARK）
（2007年 アメリカ・フランス）（上映時間1時間25分）
監督・脚本・編集：ガス・ヴァン・サント
出演：ゲイブ・ネヴァンス、テイラー・モンセン、ダン・リウ、ジェイク・ミ
ラー、ローレン・マッキニー、スコット・グリーン
＊シネセゾン渋谷ほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://paranoidpark.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
オレゴン州ポートランド。スケートボードに夢中の16歳の少年アレックス（ゲ
イブ・ネヴァンス）は、スケーターの溜まり場パラノイドパークへ行き、不良
グループと出会う。そんな中、地元で殺人事件が起こり、アレックスをはじめ
スケーターたちに、疑いの目が向けられていくのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
繊細で壊れそうな少年の内面に迫ったガス・ヴァン・サントらしい人間ドラマ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『マイ・プライベート・アイダホ』『グッド・ウィル・ハンティング〜旅立
ち』『エレファント』などで知られる鬼才ガス・ヴァン・サント監督による作
品。2007年カンヌ国際映画祭で、60周年記念特別賞を受賞しました。
この監督の作品は、基本的にかなり地味です。その代わり人間の内面を見事に
描写していて、深く重く心に残ります。
2003年のカンヌ国際映画祭パルムドールと監督賞を受賞した『エレファント』
では、高校での銃乱射事件というショッキングな素材を淡々と描き出していま
したが、この作品も衝撃的な殺人事件を抑制的に描き出します。
主人公の16歳のアレックスは、ごく普通の少年。両親の離婚に直面したり、
ガールフレンドとの仲がしっくりいかなかったりするものの、そんなことはど
この少年にもあること。しかし、ある日、スケボー好きな彼がスケボー公園
（これがタイトルのパラノイドパーク）に出かけたことから、その運命が大き
く変わってしまいます。
物語の全体像は、線路で凄惨な轢死体が見つかり、殺人事件の捜査が行われる
というもの。ただし、事件そのものを描くことには、あまり力点が置かれませ
ん。時間を行きつ戻りつする構成によって、それなりに謎は深まるものの、真
相は意外に早くわかってしまいます。
ガス・ヴァン・サント監督がやろうとしているのは、事件そのものよりも、こ
の年頃の少年に特有の繊細さを持つアレックスの内面を描くこと。いら立ち、
苦悩、葛藤など、次々に変化していくその心理をセリフよりも、表情やしぐさ、
行動などを通して巧みに表現していきます。被写体と距離を置くのではなく、
むしろ徹底的に接近して描いています。
そこで重要な意味を持つのが映像です。撮影はウォン・カーウァイ監督作品で
おなじみのクリストファー・ドイル。イメージ的なショットも含めて、多彩な
映像がアレックスの心理をすくい取ります。
ただシャワーを浴びているだけで、アレックスのヒリヒリするような思いが伝
わってきたり、トンネルでスケボーをするイメージ映像から、彼の不安定な内
面が端的に表現されたり……。
今回もハデさはまったくありません。結末もけっしてスッキリするようなもの
ではありません。しかし、観終わってズシリと残るものがあります。
アレックスの身に起こったことは、世界中のすべての少年に、いやすべての人
間に起こりうること。それだけに、よけいに重みのある映画でした。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（見事な作品ですが、けっして楽しい映画ではないので誰にでもオススメとは
いきません。しかし、あの巧みな心理描写は一見の価値があります。）
（ぽち）
〔鑑賞データ〕
2008年4月13日（日）シネセゾン渋谷にて。午後3時の回
[「は」のページ] |
|
