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プレシャス
（PRECIOUS: BASED ON THE NOVEL PUSH BY SAPPHIRE）
（2009年 アメリカ）（上映時間1時間49分）
監督：リー・ダニエルズ
出演：ガボリー・シディベ、モニーク、ポーラ・パットン、マライア・キャ
リー、レニー・クラビッツ
＊TOHOシネマズシャンテほかにて全国公開中
ホームページ http://www.precious-movie.net/
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＜ストーリー＞
1987年のニューヨーク、ハーレム。16歳のプレシャス（ガボリー・シディベ）
は、父親にレイプされて２度目の妊娠をしていた。父親は行方不明となり、母
メアリー（モニーク）はプレシャスにつらくあたり虐待する。妊娠が理由で学
校を退学になった彼女は、フリースクールに通うことになる。そこで、レイン
先生と出会い、読み書きを習い始めるのだが……。
＜レビュー＞
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虐待という悲惨な現実を描きながら後味は悪くない
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あまりにも悲惨な現実を描きながら、後味の悪さはなく、むしろ希望の光さえ
感じられる映画です。
主人公のプレシャスは、巨漢の黒人少女。母親の虐待を受けているだけでなく、
あろうことか父親にレイプされて２人目の子供を妊娠しています。前半は、そ
んな彼女の過酷な状況を、手持ちカメラを使い、アップを多用したドキュメン
タリータッチの映像でリアルに映し出します。
いかにもカロリーの高そうな食事など、細かなディテールも使って、プレシャ
スの家庭の荒廃ぶりを的確に見せていきます。
その合間には、プレシャスの願望などをポップな映像や音楽で描きます。まる
でプロモーションビデオのような映像もあって、これがリアルな映像と好対照
になっています。おかげで、プレシャスの過酷な現実から観客は目をそむけず
に直視することができます。
こうした風変わりな作風には、ストレートなお涙頂戴映画にしたくないという
作り手の意図が感じられます。まあ、それが逆にあざとく感じられる人もいそ
うですが……。
やがてプレシャスは、フリースクールに通うようになり、そこで素晴らしい先
生やクラスメートと出会い、読み書きを覚え、前向きに歩き出すようになりま
す。
この手のストーリーは単なる美談に終わりがちですが、けっしてそうはさせま
せん。相変わらずドキュメンタリータッチの映像を多用するとともに、先生や
生徒を個性的かつ等身大に描きます。
プレシャスに向き合って、サポートしてくれるレイン先生は立派な先生ですが、
何から何まで面倒を見るのではなく、一定の距離をもって接します。また、ク
ラスメートたちは基本的には良い子ながら、クセのある連中ばかりです。こう
した人物がプレシャスと絡むことで、自然でウソのない話として観客の胸に届
きます。
映画全体は、プレシャスの語り口で進行。これも物語の奥行きを広げる効果を
果たしています。
そして、レイン先生とともにプレシャスにとって重要な役割を果たすのが、マ
ライア・キャリー演じるソーシャルワーカー。クライマックスは、彼女を前に
プレシャスと母メアリーが対峙します。ここでメアリーが涙ながらに自らの胸
の内をぶちまけるシーンは圧巻。彼女の人物像に厚みを加えています。
そして、自らの道を自分で選択するプレシャス。最後にはかすかな希望の灯が
……。
悲惨な話を変わったタッチに仕上げた脚本と演出はなかなかのもの。それ以上
に見事なのが役者の演技。主人公プレシャスを演じたガボリー・シディベの恐
いもの知らずの演技も見ものですが、それ以上に鬼気迫る演技を見せるのが母
親役のモニーク。オスカー助演女優賞も納得。そしてレイン先生役のポーラ・
パットンの深みのある演技、スッピンで熱演したマライア・キャリーも印象に
残る演技でした。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（単なる感動物語や美談に仕立てなかった脚本と演出に加え、役者の演技が見
事。それだけでも観る価値はありそう。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年4月24日（土）シネマライズにて。午後2時45分の回
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