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プレステージ（THE PRESTIGE）
（2006年 アメリカ）（上映時間２時間10分）
監督：クリストファー・ノーラン
出演：ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベイル、スカーレット・ヨハン
ソン、マイケル・ケイン、デヴィッド・ボウイ、パイパー・ペラーボ
＊日比谷スカラ座ほか東宝系にて全国公開
ホームページ http://prestige.gyao.jp/
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＜ストーリー＞
19世紀末のロンドン。ロバート・アンジャー（ヒュー・ジャックマン）と、ア
ルフレッド・ボーデン（クリスチャン・ベイル）という２人のマジシャンは、
ライバル関係にあった。ある日、アンジャーの妻が脱出マジックに失敗して命
を落とす。彼女の縄を縛ったのがボーデンだったため、アンジャーはボーデン
に復讐しようとする。それをきっかけに両者は意地とプライドを賭けて激しい
戦いを繰り広げる……。
＜レビュー＞
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クリストファー・ノーランの巧妙な仕掛けが冴え渡るミステリアスな世界
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後々まで余韻が残る映画には２種類あります。１つは感動や衝撃がいつまでも
消えない映画。もう１つは何だかよくわからない不思議な気分に支配され、そ
こから抜けられなくなる映画。
クリストファー・ノーラン監督による『プレステージ』は、間違いなく後者。
けっして感動できるわけでも、衝撃を受けるわけでもないけれど、ミステリア
スさにとりつかれ、いつまでも心に残ってしまいそう。
ヒュー・ジャックマン演じるアンジャーと、クリスチャン・ベイル演じるボー
デンという２人のマジシャンのライバル物語がストーリーの軸。事故で妻を亡
くし、その原因がボーデンにあると思ったアンジャーが復讐を開始する。それ
をきっかけに、お互いのマジシャンとしての意地とプライドがぶつかり合い、
ルール無視の激しいバトルが展開される……。
女の嫉妬は怖いというけれど、男の嫉妬もコワすぎるぅ〜〜！！
しかし、この映画の魅力は、そんなライバル同士のぶつかり合いだけではあり
ません。様々な仕掛けによって、重層的で、よりミステリアスな迷宮世界へと
観客を誘うのです。
オープニングで登場するたくさんのシルクハット。え？ なにこれって……。
続いて起きるステージでのアンジャーの事故死とそれをめぐる裁判。むむ……。
その後は、ボーデンがアンジャーの日記を読みながら過去を回想する展開。た
だし、その中では、アンジャーがボーデンの日記を読んで彼の秘密を探るとい
う二重構造。現在と過去が錯綜し、アンジャー、ボーデン、そしてマジックの
仕掛けを考える男カッター（マイケル・ケインが相変わらず厚みのある演技）
という３人の男たちが、それぞれの立場から物語を語るという複雑な展開です。
やがて登場するのがニコラ・テスラ（実在の発明家）。あのデヴィッド・ボウ
イが演じる彼の存在が、ますますナゾを増幅させます。しかも、彼による発明
が、この物語の大きなターニング・ポイントになるのです。
後半は、ボーデンによる「瞬間移動」のトリックをめぐって、アンジャーと
ボーデンがさらに激烈なバトルを展開します。そこには、スカーレット・ヨハ
ンソン演じる助手のオリヴィアも重要な役割を担います。
そして、ラスト30分は、まさに驚愕の展開です。アンジャーとボーデンがそれ
ぞれ行っていた「瞬間移動」のタネが明らかになります。ここに到って19世紀
を舞台にした時代物のミステリーというドラマの構図が、ＳＦの世界にまで突
入してしまうのです。一方、それとは対照的ともいえる、シンプルなタネも明
かされ、観客を混乱の渦に巻き込みます。
一瞬あっけに取られるものの、この結末を踏まえて、それまでのシーンを振り
返ってみると、実に巧妙な伏線があちらこちらに張られていたことがわかりま
す。すべては見事に計算されていたのです。
クリストファー・ノーラン監督といえば、ボクにとっては、『バットマン ビギ
ンズ』『インソムニア』よりも、『メメント』の印象が強烈。時間軸を解体し
た上で再構築するという手法でナゾを増幅させたあの作品の魅力は、本作と相
通じるものがあります。
これだけ凝った映画をつくれるのは、ノーラン監督を置いて他にはいないでし
ょう。タネを明かされれば「な〜んだ」となるけれど、それをここまで重層的
に組み立てていくテクニックが見事。さすがに個性派監督だけのことはありま
す。
最後の一瞬にチラッと映るシーンもお見逃しなく。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（評価は二つに分かれると思います。観終わって「な〜んだ。ただそれだけの
話？」とガッカリする人も多そうなので、オススメ度のほうはやや低めにしま
した。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年6月8日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時15分の回。
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