クィーン(THE QUEEN)


(2006年 イギリス・フランス・イタリア)(上映時間1時間44分)
監督:スティーヴン・フリアーズ
出演:ヘレン・ミレン、マイケル・シーン、ジェームズ・クロムウェル、シル
ヴィア・シムズ、アレックス・ジェニングス、ヘレン・マックロリー
* シャンテシネほかにて全国公開
ホームページ http://queen-movie.jp/
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<ストーリー>
1997年8月31日、ダイアナ元皇太子妃が自動車事故に遭い他界する。イギリスは
もちろん、世界中が騒ぎとなる中で、エリザベス女王(ヘレン・ミレン)は口
を閉ざし続けた。そんな女王の態度は、イギリス国民を怒らせ、女王は窮地に
立たされてしまう。首相に就任したばかりのトニー・ブレア(マイケル・シー
ン)は事態の収拾に乗り出すのだが……。

<レビュー>
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苦悩するエリザベス女王を演じたヘレン・ミレンの演技が絶品
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10年経った今でも人々の記憶に残る、イギリスのダイアナ元皇太子妃の自動車
事故死。それをめぐって苦悩するイギリス王室と、誕生間もないトニー・ブレ
ア首相を描いた実録ドラマ。

陰謀説もささやかれるダイアナの死だけに、スキャンダラスな内容かと思いき
や、実にまっとうな人間ドラマです。

ダイアナの死を受けて、彼女と不仲だったエリザベス女王は、すでに王室を離
れた人間の死ということもあって、ひっそりと静かに見送ろうとします。

だが、ダイアナに同情する国民は、沈黙する王室を批判。そんな世論を気にし
た就任間もないブレア首相は、大々的に葬儀を行うことにします。

一方、王室内でも、世論を恐れるチャールズ皇太子は、ブレアにすり寄ろうと
します。

この映画の最大の見どころはアカデミー主演女優賞を獲得したヘレン・ミレン
の卓越した演技。それというのも、ここで描かれるエリザベス女王は、けっし
て単純な人間ではありません。ダイアナに対して複雑な感情はあるものの、そ
れだけに左右されているわけではありません。むしろ彼女の行動の基準となっ
ているのは「伝統を守る!」という視点。

とはいえ、そのためにはどうすればいいのか? いかにしたら王室を守れるの
か?

揺れ動く複雑なその胸の内を、繊細な演技で表現していきます。最初にブレア
や奥さんに会った時の微妙な心理描写なんて、そのへんの女優じゃとてもでき
ない絶品の演技。

ハンターに殺された鹿に自分を投影して同情する姿。最終局面では、より強硬
派の夫フィリップ殿下の意見を退けて決断する姿。エリザベス女王の持ついく
つもの顔を見事に演じ分けています。

ちなみに、筆者は、かつてNHKテレビで放送された彼女の主演ドラマ「第一
容疑者」が、大好きでした。

エリザベス女王にそっくりという評判ですが、確かに雰囲気は似ています。し
かし、似ているといえばブレア首相のほうがそっくり。そっくり過ぎて気持ち
悪いぐらいです(演じるのは『アンダーワールド』のマイケル・シーン)。

目新しいことはほとんどやっていませんが、当時のニュースフィルムなども織
り込みつつ堅実に描いたベテランのスティーブン・フリアーズ監督(『ハイ・
フィデリティ』『がんばれリアム』『ヘンダーソン夫人の贈り物』)の演出も
まずまずでした。誰に肩入れするでもなく、やや距離を置きつつ、当事者たち
の言動を丹念に拾い集めています。

王室に対するイギリス国民の複雑な感情もよく見えてきますね。敬愛している
反面、毛嫌いもしているという何とも屈折した感情。まあ、なんだかんだ言っ
ても、王室って大変です。王室に生まれなくて良かったです。て、イギリス人
じゃないし(笑)。

しかし、ここまで自由に王室を描けるイギリスってある意味偉い。亡くなった
人ならともかく、現役の女王を描くんだから。

さてさて、わが日本の皇室ですが、こういう映画ができないのは、やっぱりみ
なさん右翼が怖いからでしょうか。雅子様のドラマとか描いたらおもしろいと
思うんだけどなぁ〜。何なら脚本書きましょか?(笑)

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
(エリザベス女王の心の揺れが巧みに表現された映画。ヘレン・ミレンの演技
だけでも観る価値はあります)
                            <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2007年4月21日(土)シネ・リーブル池袋にて。午後2時15分の回


[「く」のページ]




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