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雷桜
（2010年 日本）（上映時間2時間13分）
監督：廣木隆一
出演：岡田将生、蒼井優、小出恵介、柄本明、時任三郎、宮崎美子、和田聰宏、
須藤理彩、 若葉竜也、忍成修吾、村上淳、高良健吾、柄本佑、大杉漣、ベンガ
ル、池畑慎之介、坂東三津五郎
＊TOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開
ホームページ http://raiou.jp/
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＜ストーリー＞
将軍家に生まれた清水斉道（岡田将生）は、母の愛を知らずに育ち、心に病を
抱えていた。ある日、家臣の瀬田助次郎（小出恵介）の"故郷の瀬田村には天狗
がいる"という話に興味を持った斉道は、静養のために向かった瀬田村で家臣の
制止を振り切って山に入り、天狗と出会う。その正体は、雷（蒼井優）という
山育ちの若い娘だった。たちまち雷に心惹かれる斉道だったが……。
＜レビュー＞
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身分違いの悲恋を描いた純愛時代劇
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宇江佐真理の同名小説の映画化。江戸時代を舞台にした時代劇ではあるものの
（殺陣などもありますが）、身分違いの純愛物語というカラーが強い映画です。
将軍家に生まれながら、狂死した母のトラウマを抱え、心を病んだ若い殿様の
清水斉道。周囲も手を焼き、見捨てられそうな彼は、家臣の故郷に静養に出か
けます。その村には山で天狗が出るという噂があり、殿様は家臣を振り切って
山に入ります。そこで出会った天狗の正体は、雷という山で育った若い娘。２
人は間もなく身分違いの恋に落ちます……。
よくある悲恋のパターンながら、斉道がトラウマを抱え心を病んでいるという
設定が効果的。一方、雷も実は単なる山の民ではなく、赤ん坊の頃にかどわか
された庄屋の娘という設定が効いています。彼女が里に下りて生家に戻ると、
その異端ぶりがより明確になり、同じく異端である斉道との恋が、自然なこと
として受け止められます。
監督は『ヴァイブレータ』『やわらかい生活』の廣木隆一。全体にオーソドッ
クスな演出ながら、映像などにその持ち味が発揮されています。雷が初めて生
家に戻った時の彼女の心を表現した揺れる映像をはじめ、雷と斉道が馬に乗っ
て遊ぶ生き生きとしたシーン、２人が再会した祭りの夜のシーンなど、素晴ら
しい映像の連続。タイトルにもある雷桜という美しい桜の木などの自然の美し
さにも圧倒されます。
悲恋物語とはいえウェットに泣かせるのではなく、２人の心を繊細に表現しよ
うとしているところもいかにも廣木監督らしいところ。ドラマの背景として、
「身分」の不条理さやそれに甘んじなければならない当時の人々の苦しさなど
も、さりげなく描かれます。
クライマックスは意外な展開。雷のキャラクターを生かして、彼女に大胆な行
動を取らせます。彼女のまっすぐな思いと、それに応えられない斉道のつらさ
がヒシヒシと伝わってくるシーンです。
さらに、ラストには18年後の後日談が用意されています。確かに、気の利いた
オチのつけ方ではあるものの、あまりにも出来すぎでウソくさいと思うのは私
だけ？
いつもながら存在感バツグンの蒼井優と、陰のある演技が光る岡田将生。さら
に、柄本明、時任三郎、池畑慎之介（意外な貫禄）などの脇役陣が見事。なか
でも雷の母役の宮崎美子の最近の映画での活躍ぶりは出色（『悪人』など）。
ベタベタではない純愛時代劇。情熱的で切ない2人の純愛が、じわじわと胸に迫
ってきます。時代劇ファンには物足りないでしょうが……。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（身分違いの純愛を生き生きと描いた時代劇。映像を中心に廣木監督らしさも
随所に発揮されています。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年10月29日（金）池袋HUMAXシネマズにて。午後1時20分の回
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