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乱暴と待機
（2010年 日本）（上映時間1時間37分）
監督・製作・編集：冨永昌敬
出演：浅野忠信、美波、小池栄子、山田孝之
＊テアトル新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://ranbou-movie.com/
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＜ストーリー＞
古びた木造平屋建ての市営住宅に暮らす一組の男女。メガネにジャージ姿の
奈々瀬（美波）は、他人の機嫌を気にして愛想笑いを浮かべ、兄でもない同居
の男・英則（浅野忠信）を「お兄ちゃん」と呼んでいた。ある日、近所に番上
（山田孝之）と妊娠中の妻あずさ（小池栄子）が引っ越してくる。あずさは
奈々瀬の高校時代の同級生で、彼女を嫌悪していた。番上夫妻の出現によって、
奈々瀬と英則の異様な関係が少しずつ明らかになるのだが……。
＜レビュー＞
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屈折しまくりの風変わりな愛の物語。哀しさや切なさもちょっぴり……
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『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』などで知られる本谷有希子の戯曲を『パ
ビリオン山椒魚』の冨永昌敬監督が映画化。『パビリオン山椒魚』は変わった
映画でしたが、今回の映画もかなりユニーク。屈折しまくりのラブストーリー
です。
ある夫婦が木造屋建ての市営住宅に引っ越してきます。妻あずさは妊娠中。夫
の番上は休職中。すると、近所にヘンなカップルがいることがわかります。女
の奈々瀬は他人の顔色ばかりうかがって、同居する血のつながりのない男・英
則を「お兄ちゃん」と呼んでいます。その「お兄ちゃん」も何やら怪しげな言
動。しかも、奈々瀬はあずさの高校の同級生で、あずさは彼女をひどく恨んで
いる模様。
まもなく、番上は奈々瀬にちょっかいを出します。なにせ本心を隠し、他人に
嫌われることを極度に恐れる奈々瀬のこと。結局、ズルズルと男女関係になだ
れ込み、英則はそれを天井裏から観察。一方、憎き奈々瀬と夫の浮気を知った
あずさはぶち切れて……。
というように、あまりにも強烈過ぎる個性の４人が繰り広げるドタバタ劇。
ユーモアたっぷりで笑いどころが満載です。舞台劇が原作らしく、軽妙な会話
のやり取りが笑いを誘います。
次々におかしなことが起きて、いったい先がどうなるのかも読めないし、登場
人物たちが抱えた秘密がなかなか明らかにならないので、つい見入ってしまい
ます。
ただし、ただのドタバタ劇ではありません。そこからは人間の哀しい性分が見
えてきます。奈々瀬や英則ほど極端ではないものの、ああいう「めんどくさい
女」や、素直に自分の気持ちを言えないひねくれた男はどこにでもいるもの。
ぶち切れまくるあずさや、だらしなさすぎる番上も、そのへんにいそうなキャ
ラ。おかげで彼らを見ているうちに、何だか切なくなってくるのです。
ドラマはやがて思わぬ展開に突入します。とんでもない修羅場の末に訪れるあ
っとビックリの結末。
実は奈々瀬と英則の奇妙な関係の背景には、ずっと昔の悲劇的な事件があった
ことがわかります。それさえも笑いにまぶした後で、それを一気に純愛に転化
させるラスト。
途中まではそうでもありませんが、ラストに近づくにつれて間違いなくこの映
画がラブストーリーであることがわかってきます。あまりにも風変わりすぎる
純愛物語です。そして、英則は最後まで「リンゴはいらない」のでした……。
浅野忠信、美波、小池栄子、山田孝之の４人の怪演ぶりが見事。中でも女のコ
ワサと哀しさを感じさせる小池栄子のぶち切れぶりはアッパレです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（ストレートなラブストーリーにはない魅力を持つ、屈折しまくりのラブス
トーリー。楽しく笑って観られます。人間の哀しさや切なさも……。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年10月11日（月）テアトル新宿にて。午後4時30分の回
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