リダクテッド 真実の価値(REDACTED)


(2007年 アメリカ・カナダ)(上映時間1時間30分)
監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ
出演:ロバート・デバニー、イジー・ディアズ、パトリック・キャロル、ダ
ニー・シェルマン、ケル・オニール
*シアターN渋谷ほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://www.cinemacafe.net/official/redacted/
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<ストーリー>
2006年、イラク・サマラ。米軍駐屯地では、映画学校志望の米兵サラサールが
ビデオ・ダイアリーを撮影していた。そんなある日、検問所にやってきた一台
の車が減速の指示を無視して走行。米兵たちの銃撃により、乗車していた妊婦
が死亡する。だが、その後には、さらに恐ろしい事件が待ち受けていた……。

<レビュー>
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ブライアン・デ・パルマが告発する情報操作の陰に隠された事実
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2006年にイラクで実際に起こった米兵による少女レイプ、一家惨殺事件を題材
にした映画。冒頭に、「この映画はフィクションだが、事実に基いてつくられ
ている」という字幕が流れます。

全体の構成は、擬似ドキュメンタリー。問題の事件を中心に、その前後の米兵
たちの姿をドキュメンタリー・スタイルで描いていきます。

初めのうち、駐屯地内の米兵たちは、それほど緊迫した感じには見せません。
しかし、まもなく彼らの置かれた状況が、とんでもないものであることがわか
ってきます。イラク人に対する疑心暗鬼(誰がテロリストがわからない!)や
差別意識、長引く駐留による不安感や焦燥感、そうしたものを背景に米兵たち
は次第に暴走していきます。

最初に断りがあるので、フィクションとわかっているのですが、それでもその
内容には戦慄をおぼえます。あまりにリアルで、荒々しい映像が印象的です。

特にコワイのが、それなりに良識ある兵士の態度。自身は残虐行為に参加しな
かったものの、バカ兵士どもの暴走を止められず、上官に報告することもでき
ません。軍隊や戦争の本質が垣間見える出来事です。

映像の中心になるのは、除隊後に映画学校に入学したいと希望する兵士が撮影
したビデオ・ダイアリー。さらに、メディアのニュース映像や従軍記者の取材
映像、アメリカとイラクを結ぶTV電話、反米組織によるインターネット映像
など、様々な映像で構成されています。

いくら擬似ドキュメンタリーとはいえ、全体の構成が乱雑にも思えたのですが、
そのうちにそのねらいがわかってきました。

タイトルの"リダクテッド"とは、残酷なシーンや不都合な情報を削除した「編
集済み」映像を意味します。つまり、アメリカ政府やメディアによって、意図
的につくられた映像。それよりも、そこから削除されたり、無視された映像の
中に本当の真実があるのではないか。そんな考えのもとに、その対極として、
様々な映像をできるだけそのまま見せようとしたのではないでしょうか。

言うまでもなく、この映画は都合の悪いことを隠蔽しようとするアメリカ政府
やマスコミを、痛烈に批判しています。

しかし、けっして米兵自体を悪人に仕立ようとしている感じではなく、兵士た
ちの置かれた過酷な状況などもきちんと描かれています。それなのに、アメリ
カ公開時には上映反対の動きもあったというのだから、やれやれ……。まあ、
日本でも「自虐的」とか言って、反対運動が起きそうな気もするから、偉そう
なことは言えませんけどね。

この映画の監督は、あのブライアン・デ・パルマ。そうです。『キャリー』
『殺しのドレス』『アンタッチャブル』『ミッション・インポッシブル』『ブ
ラック・ダリア』など数々のヒット作で知られる監督。『カジュアリティー
ズ』でベトナム戦争での集団強姦殺人を描いているとはいえ、大ベテランがこ
んなにラジカルな映画を撮るんだからビックリ。無名の役者たちの演技も、な
かなかのものでした。

ラストで泣き崩れる元兵士の姿にやや救いが……。しかし、エンドタイトルで
流れる映像はやはり衝撃的だよなぁ〜。

《ぽちの満足度》
★★★☆☆(+1/2★)

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
(けっして楽しい映画ではありませんが、世界で何が起きているのかを知るの
には見逃せない作品です。)
                              (田中ひろあき(ぽち))
〔鑑賞データ〕
2008年10月28日(火)シアターN渋谷にて。午後1時の回


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リダクテッド 真実の価値
ブライアン・デ・パルマ