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シークレット・サンシャイン（密陽）
（2007年 韓国）（上映時間2時間22分）
監督・脚本：イ・チャンドン
出演：チョン・ドヨン、ソン・ガンホ、チョ・ヨンジン、キム・ヨンジェ、ソ
ン・ジョンヨプ、ソン・ミリム、キム・ミヒャン、イ・ユンヒ、キム・ジョン
ス、キム・ミギョン、オ・マンソク
＊シネマート六本木ほかにて全国公開
ホームページ http://www.cinemart.co.jp/sunshine/
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＜ストーリー＞
交通事故で夫を亡くしたシネ（チョン・ドヨン）は、幼い息子ジュンと２人で、
亡き夫の故郷・密陽に引っ越しピアノ教室を開いて再スタートを切る。そんな
彼女に好意を寄せる自動車修理工場の社長ジョンチャン（ソン・ガンホ）。だ
が、そんなある日、思いもよらぬ悲劇がシネを襲う。息子のジュンが誘拐され
たのだった……。
＜レビュー＞
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あまりにも痛切でやるせない母の思い。救いはないのか？
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『ペパーミントキャンディ』『オアシス』で日本でも知られる韓国のイ・チャ
ンドン監督の新作。
タイトルの『シークレット・サンシャイン』とは、密陽という韓国の地方都市
のこと。亡き夫の故郷であるこの地方都市に、息子とともにソウルから引っ越
してきた主人公のシネが、ピアノ教室を開いて再スタートを切ります。
大都会から小さな町へと移り住んだギャップや、亡き夫への複雑な思い（実は
必ずしも幸福な結婚ではなかった）などを抱えつつも、どうにか暮らすシネ。
そんな彼女に煙たがられながらも、何かと面倒見る自動車修理工場の社長ジョ
ンチャン。
ところが、やがて衝撃的な出来事が起きます。シネの息子が誘拐され、身代金
を払ったものの殺害されてしまいます。犯人は逮捕されたけれど、悲しみのあ
まり憔悴していくシネ……。
この映画の最大の見どころは、ヒロインのシネを演じたチョン・ドヨンのスゴ
すぎる演技です。
複雑な思いを抱えつつも、どうにか折り合いをつけて地方都市で再出発する胸
のうち、突然息子が誘拐された時の狼狽ぶり、そして最悪の事態を迎えてから
の混乱と憔悴。一人芝居のようなシーンも多いのですが、渾身の演技でヒロイ
ンを演じ切っています。彼女の痛みがダイレクトに観客に伝わってきます。
その後、シネはふとしたことからキリスト教に入信して、神に救いを求めます。
そこで、一度は心の傷が癒されたかに見えたものの、その後は狂気へと走って
いきます。そのあたりの心理の微妙な変化を、不自然さを感じさせずに演じて
います。
正直なところ、彼女だけを描いていたら、あまりにも痛すぎるその姿をまとも
に観ていられなかったかもしれません。しかし、そこに彼女を見守るジョンチ
ャンが描きこまれることで、わずかな救いのようなものが感じられます。
本来は陽気でちょっと軽薄なぐらいのジョンチャン。シネに対する言動はあま
りにも不器用で、笑ってしまうぐらいです。しかし、そこにはとてつもなく温
かい思いがこもっています。演じるのは『殺人の記憶』『グエムル』などの名
優ソン・ガンホ。そんな２人の演技に焦点を当てた抑制的な演出も印象に残り
ます。
とにかく救いのない話で、ラストもけっして希望にあふれたものではありませ
ん。ようやく新しいスタートかと思わせたところで、またしてもツライ出来事
が起きます。しかし、それでもずっとシネを見守るジョンチャンの姿に、ほん
のわずかな光のようなものを見出すのはボクだけでしょうか。
シネを救うとしたら、それは神などではなく、人間なのかもしれません。
一人の母の悲劇と、彼女を見守る男の姿を通して様々なことを考えさせてくれ
る映画。あなたは、この痛みに耐えられるでしょうか？
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆（＋1／2★）
（チョン・ドヨンの演技だけでも観る価値のある映画で個人的には高評価です
が、とにかく救いがない映画なので覚悟して観てください。）
（ぽち）
〔鑑賞データ〕
2008年6月7日（土）シネマ・ロサにて。午後2時40分の回
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