千年の祈り(A THOUSAND YEARS OF GOOD PRAYERS)


(2007年 アメリカ・日本)(上映時間1時間23分)
監督:ウェイン・ワン
出演:ヘンリー・オー、フェイ・ユー、ヴィダ・ガレマニ、パシャ・リチニコ

*恵比寿ガーデンシネマにて公開。全国順次公開
ホームページ http://sennen-inori.eiga.com/
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<ストーリー>
妻に先立たれ、北京で隠居生活を送るシー(ヘンリー・オー)は、アメリカに
暮らす娘イーラン(フェイ・ユー)を訪ねることにする。離婚して一人暮らし
のイーランを心配して、何かと口を出すシー。それに対してイーランは苛立つ
ようになる。一方、公園で出会ったイラン人女性と交流し、心を通わせていく
シーだったが……。

<レビュー>
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中国人父娘の葛藤のドラマ。そして微かな希望の光が……
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アメリカ在住の中国人女流作家イーユン・リーの短編小説を、『ジョイ・ラッ
ク・クラブ』『スモーク』のウェイン・ワン監督が映画化した作品。中国人父
娘の葛藤を描いたドラマです。

中国に住むシーが、アメリカに住む娘のところを訪れます。久々の再会を喜ぶ
父ですが、離婚して一人暮らしの娘の生活はアメリカナイズされて自分とはか
け離れた世界。伝統的な価値観を持つ彼は、娘を心配するあまり、あれこれと
口を出すようになります。それによって娘との関係が悪化していきます。

いくら娘を心配しているとはいえ、父親の干渉は目にあまるものがあります。
しかし、その背景には、彼が仕事一筋で家ではほとんど口をきかず、娘にかま
ってやれなかったという悔恨の思いがあります。

一方、娘は娘でそうした父に対して屈折した思いを抱いています。しかも、離
婚して今も難しい問題を抱えているだけに、なおさら父の干渉がうとましく感
じられます。

そんな2人の心のすれ違いや孤独感を、カメラは淡々と切り取っていきます。
2人の気まずい食卓シーンなど、繊細な描写が印象的です。

また、父親とイラン人女性とのカタコトの英語による交流を通して、親が子に
対して持つ普遍的な思いも描き出しています。これも、父と娘とのドラマに厚
みを加えています。

最初からギクシャクしていた2人の関係ですが、やがてある出来事によって大
きな亀裂が生じます。しかし、それをきっかけに、父親がある秘密を告白し、
最後は少しだけ2人の心が近づきます。そのラストの2人の表情が心に残りま
す。しみじみとした余韻の残るエンディングです。

残念なのは、この最後の部分がバタバタと慌しく終わってしまうこと。もう少
し時間をかけて描けば、最後に2人が心を寄せ合うところが、さらに引き立っ
たと思うのですが。

これは、あくまでも特定の中国人父娘のドラマです。文革など過去の歴史も背
景として織り込まれています。

しかし、ここに描かれる世代間の対立や、違う環境で暮らす者のすれ違いは、
どこの親子にもあることです。それだけに、国籍、性別、年齢などを問わず、
すべての親子の問題としてリアルに感じられるのではないでしょうか。

父親役のヘンリー・オーの年輪を感じさせる演技が印象的。『ラストエンペ
ラー』などにも出演したアメリカ在住の中国人俳優だそうです。

《ぽちの満足度》
★★★☆☆

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
(しみじみとした余韻の残る父と娘のドラマ。特に親子の問題に関心のある人
はぜひ。)
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2009年12月2日(水)恵比寿ガーデンシネマにて。午後3時の回


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