死刑台のエレベーター


(2010年 日本)(上映時間1時間51分)
監督:緒方明
出演:吉瀬美智子、阿部寛、玉山鉄二、北川景子、平泉成、りょう、笹野高史、
熊谷真実、 田中哲司、堀部圭亮、町田マリー、上田耕一、津川雅彦、柄本明
*角川シネマ新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://www.shikeidai.jp/
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<ストーリー>
大企業の会長夫人・芽衣子(吉瀬美智子)と、その傘下の医療機構の医師・時
籐(阿部寛)は愛人関係にある。2人は会長(津川雅彦)を自殺に見せかけて
殺害する。だが、証拠を隠すために現場のビルに戻った時籐は、エレベーター
に閉じこめられてしまう。芽衣子は、予定の時間を過ぎても現われない時籐に
苛立ちと不安を募らせ、夜の街をさまよう。そんな中、時籐の車を盗んだ若い
カップル(玉山鉄二、北川景子)が殺人事件を起こすのだが……。

<レビュー>
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ルイ・マル監督の名作サスペンスをオリジナルに忠実に再現
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フランスのルイ・マル監督が1957年に手がけた名作サスペンスのリメイクです。

実業家の妻・芽衣子が不倫関係にある医師・時籐に夫を殺させます。完全犯罪
のはずだったのに、手違いから医師はエレベーターに閉じ込められてしまいま
す。しかも、時籐の車を盗んだカップルが別の殺人事件を越したことから、さ
らに2人は窮地に追い込まれていきます……。

不倫相手の夫を殺したもののエレベーターに閉じ込められてしまった時籐、計
画と違って姿を現さない彼を必死で捜す芽衣子、無軌道な殺人事件に足を突っ
込んでいく若いカップル。彼らを並行して描いているのが映画全体の構成。

オリジナル版をすべて覚えているわけではありませんが、どうやらほとんどオ
リジナルのままにリメイクされているようです。舞台がパリから横浜に移って、
時代が現在になった程度で、ディテールも含めてかなり忠実になぞっている感
じ。

そのせいか、どうにも素直にスクリーンに入り込めません。オープニングの芽
衣子と時籐との電話でのやり取りから違和感ありまくりです。もはや天然記念
物的なアンティークなエレベーター、芽衣子の夫とヤクザのボスとの会話、中
途半端に出てくる軍隊の話。

プロデューサーの意向なのか、版権の関係で何かあるのかは知りませんが、お
国柄も時代も違うのに、無理やりオリジナルをなぞるのは不自然では?物語の
設定のみ借りて、大胆に換骨奪胎したほうが面白い作品になったと思うのです
が。

事件の背景にある芽衣子と時籐の狂おしい愛が、あまり描かれていないのも物
足りないところ。それがあれば、もっと緊迫感のある映画になったはず。

まあ、それでも、それなりの映画にはなっています。エレベーターに閉じ込め
られた時籐のあせり、彼の行方を捜し続ける芽衣子の不安などはきちんと表現
されています。2人のアップを効果的に使った映像も魅力的。大人の愛を描い
た秀作『いつか読書する日』や『独立少年合唱団』で知られる緒方明監督が、
なかなか頑張っています。

クールさと激情を同時に表現した吉瀬美智子、静かな中に様々な感情を込めた
阿部寛、さらに玉山鉄二と北川景子の若者らしい破滅型の演技も印象的。

オリジナルとは比べ物になりませんが、オリジナルの入門編だと考えればよく
出来た映画だと思います。筆者も久々にオリジナルが観たくなりましたから。

≪ぽちの満足度≫
★★☆☆☆

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
(それなりに頑張ってはいるけれどオリジナルと比較するのはかわいそう。オ
リジナルの入門編として観るのが正解でしょう。)
                              (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2010年10月13日(水)角川シネマ新宿にて。午後2時の回


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