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色即ぜねれいしょん
（2009年 日本）（上映時間1時間54分）
監督：田口トモロヲ
出演：渡辺大知、峯田和伸、岸田繁、堀ちえみ、リリー・フランキー、臼田あ
さ美、石橋杏奈、森岡龍、森田直幸、大杉漣、宮藤官九郎、木村祐一、塩見三
省
＊シネセゾン渋谷、新宿バルト9ほかにて全国公開
ホームページ http://shikisoku.jp/
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＜ストーリー＞
1974年、京都の仏教系男子校に通う高校1年生の乾純（渡辺大知）は、ボブ・デ
ィランにあこがれる平凡な文科系男子。学校ではヤンキーや体育会系の陰に隠
れ、家では優しい両親に恵まれ反抗もできない。おまけに初恋の女子に告白で
きずに悶々とする毎日。そんなある日、友だちの伊部と池山から夏休みに、フ
リーセックス主義者が集まるという噂のある隠岐島のユースホステルへ行こう
と誘われる。ギターケースを片手に島へ向かった純は、そこでオリーブと名乗
る美少女に一目ぼれするのだが……。
＜レビュー＞
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等身大で描いた情けないけどキラキラした青春の日々
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青春映画は、いかにして観客の共感を呼ぶかが大きなポイント。『アイデン＆
ティティ』に続く、みうらじゅん原作、田口トモロヲ監督によるこの映画は、
その点で出色の映画です。1970年代の高校生たちをリアルに描いて、観客自身
の青春時代を思い起こさせてくれます。
主人公は京都の仏教系私立高校1年の純。ボブ・ディランにあこがれて、自分で
ギターを弾いて曲を作るものの、全体としては中途半端な毎日。学校で幅をき
かせるヤンキーにもなれず、親に反抗しようにもあまりにも優しい親でそれも
できず、片思いしている女の子に告白する勇気もない。せいぜい自分がヒー
ローになる妄想をするのがやっと……。
そんな主人公のキャラクターだけで共感してしまう人も多いのでは？ ほとん
どの高校生は、同様に中途半端な毎日を送っていますからねぇ。何かに打ち込
みたくてもそれが何かわからず、周囲に反抗しようにもできず、モヤモヤした
思いですごす日々。
特に舞台となっている1970年代は、メールも携帯もないし、男女関係も今ほど
進んでいないから、なおさらでしょう。
そんな現状を変えたくて、友人に誘われた純は、夏休みに隠岐島旅行に出かけ
ます。そこのユースホステルに、フリーセックスの人たちが集まるという噂を
信じて……。
もちろんそんなことはただの噂で、そこには全共闘崩れの管理人ヒゲゴジラや
年上の女性オリーブなど、様々な人が集っています。そうした人々と触れ合う
うちに、彼の心に様々な思いが湧き上がります。
隠岐島ですごす高校生たちのひと夏の青春が、等身大で描かれます。あの時期
独特の熱気がスクリーンを通して伝わってきます。
やがて島から戻ってまた元の生活を送る純たち。友人たちの身辺は少しずつ変
わりだし、純にも恋愛らしきものが……。
島から帰ってもドラマティックなことは起きません。少しずつ変化が訪れるの
みです。でも、それでいいのです。みんなの高校時代だって、たいていはそん
なものなのだから。
クライマックスは文化祭。ついに自分の殻を打ち破るために、自分ひとりでス
テージに上がることを決意する純。はたしてその結末は？
青春の熱い思いが爆発するようすを描いた後半は特に秀逸。カッコ悪いけれど、
とってもカッコいい純に拍手です。
というわけで、この映画では音楽が大きな要素を占めます。元ミュージシャン
で、音楽をよく知っている田口監督がそれをうまく料理しています。最初は日
常をただつぶやいているだけで、まったく心に響かない純の歌。しかし、島で
知り合ったオリーブに捧げる歌は、見事に彼女の心に届きます。そして文化祭
でヤンキーたちの歌に刺激されて歌った魂の叫び！これぞロック！純の歌は見
事に進化を遂げたのです。
主役の渡辺大和をはじめほとんどの役者はミュージシャンとのことで、演技は
ヘタです。それでも一生懸命に演じていることで、かえって当時の等身大の若
者の雰囲気が伝わってきました。純の両親役の堀ちえみ、リリー・フランキー、
そしてオリーブ役の臼田あさ美なども、みんないい演技をしています。
青臭くて、カッコ悪くて、モヤモヤとしていて、それでも何とか前に進もうと
する高校生を、笑いながら応援したくなってくる映画です。
《ぽちの満足度》
★★★★☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（等身大で気持ちの良い青春映画。キラキラした青春の日々を思い出したい方
はぜひ。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2009年8月22日（土）新宿バルト９にて。午後5時10分の回
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