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刺青 堕ちた女郎蜘蛛
（2006年 日本）（上映時間１時間36分）
監督：瀬々敬久
出演：川島令美、和田聰宏、光石研、嶋田久作、松重豊
ホームページ http://www.artport.co.jp/movie/shisei/
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＜ストーリー＞
妻子と別居し、自己啓発セミナーの勧誘をしている二ノ宮（和田聰宏）は、出
会い系サイトのサクラをしている女・アサミ（川島令美）を誘い出し熱心に勧
誘する。やがて、セミナーの主宰者・奥島（松重豊）に引き合わされたアサミ
は、彼に抱かれてしまう。奥島は自分と同じように彼女の背中にも刺青を入れ
ようと、二ノ宮に命じアサミを刺青師のもとへ向かわせるのだが……。
＜レビュー＞
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谷崎潤一郎のエロスの世界に現代の世相を加味
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谷崎潤一郎の有名な小説が原作。官能小説というか、エロスな文学なわけで、
ある種人間の根源につながるテーマだけに、過去にもたくさん映像化されてい
ます。
『ＤＯＧ ＳＴＡＲ／ドッグ・スター』『ＭＯＯＮ ＣＨＩＬＤ』『サンクチュ
アリ』の瀬々敬久監督によるこの作品は、刺青を入れることで大きく変貌して
いく女性を描く基本線は同じであるものの、そこに現代的な視点を取り入れて
います。
主人公のアサミを出会い系サイトでサクラのバイトをしている女の子に設定、
さらに彼女と関わる二ノ宮を自己啓発セミナーの勧誘をしている男にしている
ところが目新しい。また、２人とも自分の存在意義を見出せずに、家庭崩壊、
不倫などによって心に傷を負っているところも現代風です。
孤独で疎外感を抱えた男女の姿をリアルに描き出しています。ただのエロスで
はなく、今の時代と、そこでもがく人間を描きたいという瀬々監督の明確な姿
勢が、そこにうかがえます。
ただし、その分ヒロインの変貌というところは、描き足りない感じもしました。
エロスそのものを描き出しわけでもなし。谷崎作品という期待感で観ると、落
胆させられるかもしれません。
刺青をきっかけに、どんどん転落していく男女。というわけで、二ノ宮がセミ
ナー主宰者を殺害するところまでは読めたのですが、その後の展開は予想外。
二ノ宮の純粋さがうらやましい反面、コワクもある。アサミの開き直り方も、
何かにとりつかれたようで気味悪さを感じてしまいました。
そして、結末の２人の再会。え？ アイツ、生きてたのか？ ゾンビか？
（笑）
というのは冗談ですが、あれはやはり微かな希望を提示したのでしょうか？
ラストの蝶のイメージショットも瀬々監督らしい示唆に富んだ描写ですが、何
を意味しているのか？
実は、筆者、瀬々監督とは多少面識があるので、いつか、あのシーンに込めら
れた意味など聞いてみたい気がします。
主演の川島令美は少しカワイすぎる気もしましたが、後半の変貌ぶりとの落差
を見せる点では良いキャスティングだったかも。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（谷崎の原作のイメージをあまり持ちすぎずに観ると、けっこうおもしろい作
品だと思います。古典を通して現代が見えてくるはず。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年5月 ＤＶＤ鑑賞
[「し」のページ] |
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