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その土曜日、７時５８分
（BEFORE THE DEVIL KNOWS YOU'RE DEAD）
（2007年 アメリカ・イギリス）（上映時間1時間57分）
監督：シドニー・ルメット
出演：フィリップ・シーモア・ホフマン、イーサン・ホーク、マリサ・トメイ、
アルバート・フィニー、ローズマリー・ハリス、アレクサ・パラディノ、マイ
ケル・シャノン、エイミー・ライアン、ブライアン・F・オバーン
＊恵比寿ガーデンシネマほかにて公開
ホームページ
http://www.so-net.ne.jp/movie/sonypictures/homevideo/sonodoyoubi/
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＜ストーリー＞
娘の養育費も払えないハンク（イーサン・ホーク）に、兄のアンディ（フィリ
ップ・シーモア・ホフマン）が強盗計画を持ちかける。実は、会計士として優
雅な暮らしを送っているように見えるアンディだが、どうしても金が必要なワ
ケがあったのだ。彼が選んだ強盗のターゲットは、なんと両親が営む宝石店。
ためらうハンクを説得し、強盗を実行させるアンディだったが……。
＜レビュー＞
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破滅していく家族を描いたシドニー・ルメット久々の改心作
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『十二人の怒れる男』『狼たちの午後』の名匠シドニー・ルメット監督の新作。
ルメット監督、いったいいくつになったのかと思ったら、なんと今年84歳！
しかも、最近はつまらない映画ばっかりつくっていたのに、ここにきて「大復
活！」と言いたくなるような見事な作品の登場です。
対照的に思える２人の兄弟それぞれが、緊急に金を必要としているという状況
の中、兄が弟に強盗を持ちかけます。そのターゲットはなんと両親の経営する
宝石店。保険に入っているから実害はないし、誰も傷つかないから大丈夫と説
得されて、犯行を決意する弟。
ところが、コワくなった弟は、知り合いを仲間に引き込み、自分は車で待機す
ることに。それが災いし強盗は失敗に終わり、しかもハンクたちの母親が……。
ルメット監督は、犯行時を起点にして、時間を行きつ戻りつしながら、それぞ
れの登場人物の経緯を描き出します。個々の映像も冴え渡っているし、それら
のつなぎ方も実に巧み。全編に漂う異様な緊張感は、最初から最後までまった
く途切れません。
当初は犯行がバレないと思っていた兄弟。しかし、少しずつボロが出て、真相
が明らかになっていきます。それとともに混乱し、憔悴していく兄弟。ほんの
ささいなことから、破滅へと突き進んでいくその姿には、恐ろしさと同時に
痛々しさが感じられます。
しかも、そんな兄弟を見つめる父親が、大きな疑念を抱くようになります。そ
れが衝撃的な結末へとつながっていくのです。
事件の顛末を描く中で、兄弟の確執や親子の屈折した関係などもあぶりだされ
てきます。本来なら、それぞれが心の奥にしまっていて、絶対に出てこなかっ
た感情。それが表に出ることで、一家の破滅へのスピードはどんどん加速して
いきます。
兄を演じるのは『カポーティ』のフィリップ・シーモア・ホフマン。弟を演じ
るのはイーサン・ホーク。もがけばもがくほど、ますます泥沼に陥っていく姿
を見事に表現しています。そして、父親役は大ベテランのアルバート・フィ
ニー。兄の妻役のマリサ・トメイなども加わって、まさに絶妙のコラボレーシ
ョン。これだけの役者を使いこなすルメット監督の手腕に感服。
ラストは重苦しく、そして救いのない結末。あまりのあと味の悪さに気後れし
てしまう人もいそうですが、それまでのドラマを追えば、やはりあの結末しか
ないでしょう。
破滅に向かう家族の姿を通して、人間の抱える深い深い闇を容赦なく描き出し
た映画。観たらすぐに忘れてしまうような映画が多い中で、あとあとまでズシ
リと心に重いものを残す作品です。問題作とか、衝撃作とか、そんな次元を超
えたスゴミがあります。
観客の胸をグサリと突き刺す、ルメット監督久々の快心作！
《ぽちの満足度》
★★★★☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（暗い内容ですが、あとあとまで余韻が残る見応え十分な映画。中身の濃いド
ラマを観たい方は必見。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2008年10月12日（日）恵比寿ガーデンシネマにて。午後4時40分の回
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