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ある朝スウプは
（2003年 日本）（上映時間１時間30分）
監督・脚本・撮影・編集：高橋泉
出演：廣末哲万、並木愛枝、高橋泉、木村利絵、垣原和成
＊ユーロスペースにて公開（2005年7月）
ホームページ http://www.pia.co.jp/pff/soup/
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＜ストーリー＞
電車の中で突然発作に見舞われパニック障害と診断された北川（廣末哲万）。
会社を辞め自宅に引きこもるようになった彼を同棲相手の志津（並木愛枝）は
献身的に支える。だが、やがて、北川は２人の部屋には不似合いな黄色いソフ
ァを持ち込む。実は、彼は新興宗教にのめり込んでいたのだ。必死に彼を元に
戻そうとする志津だったが……。
＜レビュー＞
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新しい才能の出現。リアルで痛い愛の物語
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ぴあ主催のＰＦＦアワード2004でグランプリを受賞するなど、各地の映画祭で
評判を呼んだインディーズ作品。
パニック症候群になり、それをきっかけに新興宗教にはまる男。そんな彼を立
ち直らせようと必死になる女。そんな一組のカップルの愛の物語。
自主映画ということもあり、ほとんどがアパートの室内での撮影。何だかちゃ
ちい感じで、最初は、日大芸術学部の学生さんの卒業制作作品かと思ってしま
った。あ、日芸の学生さん失礼！（笑）
しかし、そのうちに唸らされてしまった。この映画における描写力は半端では
ない。主人公カップルの揺れ動く心理が見事に描写されている。
通常のドラマには見られないような斬新なカメラアングルなどによって、映像
の力で２人の心理を切り取っていく。自主映画ゆえの制限が、ここでは逆にプ
ラスに転じているようでさえある。特に女性の心理がよく表現されている。
どうにかして男を理解し、一緒に生きたいと思う女。しかし、すでに男の心は
別の世界に行ってしまっている。どうあがいても、状況は良くならない。新興
宗教からも抜けられないし、病気も良くならない。いや、むしろ悪化している
感じでもある。泣き叫び、怒り、笑う志津の姿が、切なく、痛々しい……。
監督・脚本・撮影・編集の高橋泉と、主演の廣末哲万は、映像ユニット「群青
いろ」を結成して、いくつもの作品を送り出している。2007年にはPFFスカラシ
ップを受けて、廣末の監督・出演、高橋の脚本で『14歳』という秀作を制作し
た。この映画で志津役を演じるとともに音楽を担当した並木愛枝も「群青い
ろ」の常連のようで『14歳』で主演を演じている。
廣末、並木ともに、けっして演技が巧みなわけではなく、美男美女というので
もないが、かえってそれがこの映画のリアルさを強調する役割を果たしている。
先に『14歳』を観てしまったせいもあるのだろうが、まさに原石のような才能
の輝きを感じさせる作品だと思う。高橋と廣末は間違いなく、映像作家として
の才能は一級品であり、世界にもひけをとらない。
まあ、この映画にしても、『14歳』にしても、観客を楽しませようとか、感動
させようとかいう意図は全くない。それゆえメインストリームを歩むことはな
いだろう。そんな日本映画の現状が残念ではあるのだが。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（日本映画における新しい才能を出現を感じさせる映画。リアルな男女の愛が
痛い。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年6月 DVDにて鑑賞。
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