|
スープ・オペラ
（2010年 日本）（上映時間1時間59分）
監督：瀧本智行
出演：坂井真紀、西島隆弘、加賀まりこ、藤竜也、平泉成、萩原聖人、鈴木砂
羽、田山涼成、余貴美子、塩見三省、草村礼子、嶋田久作、菅原大吉、品川徹、
田村三郎、森下能幸、入江若葉
＊シネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほかにて公開
ホームページ http://www.soup-opera.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
大学の図書館で働くルイ（坂井真紀）は、幼い頃から母親代わりとなって育て
てくれた叔母のトバちゃん（加賀まりこ）が、突然、年下の男と結婚して家を
出たため、古い一軒家でひとりぼっちになってしまう。しかし、まもなく、猫
を追って庭に迷い込んできた自称画家のトニー（藤竜也）と出版社でバイトす
る青年・康介（西島隆弘）が、ひょんなことから同居することになるのだが…
…。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
メルヘン調でほのぼのと描く「擬似家族」の出会いと別れ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
タイトルや予告編を見て、最近よくある食べ物ネタの癒し系映画かと思ったら、
それとはひと味もふた味も違う映画でした。
大学の図書館で働く主人公ルイ。育ての親で叔母のトバちゃんが、ある日突然、
若い男と結婚すると宣言して家を出ます。一人残されたルイですが、そこに自
称画家のトニーが住み着くようになり、まもなく出版社でバイトする康介も居
候。古い一軒家で３人の奇妙な同居生活が始まります……。
ちょっと現実離れしたこんなお話を、無理にリアルに描こうとせずに、ファン
タジー調で描いているのがこの映画の特徴。壊れたメリーゴーランドの前での
アコーディオンなどの演奏シーンを随所に散りばめ、メルヘンチックな雰囲気
を演出しています。
ユーモアもたっぷりです。主人公たち３人の楽しい会話に加え、勝手に身の上
話を語る図書館長、タロット占いをする大学教授、女性の顔を見ないと小説が
書けない作家など、強烈な個性の人たちが笑いを生み出します。
ほのぼのとした雰囲気の中で描かれるルイたち３人の交流。彼らは、まるで家
族のように暮らします。その絆となるアイテムが、おいしいスープ。ほほえま
しくて、観ているうちに心が温かくなってきます。
しかし、けっして現実から遊離しているわけではありません。やがてルイには
大きな変化が訪れます。彼女の出生の秘密に絡んで、トニーとの距離感が微妙
に変化。また、康介との関係にも変化が生じます。それまでとは一転、人と人
とが新しい関係を築くことの難しさを感じさせる展開です。
着地点は鮮やか。クライマックスでルイにプレゼントされるのは、この映画で
最もメルヘンチックなシーン。登場人物たちによる美しくて楽しいダンスシー
ンです。
そして、最後に見せるルイのすがすがしい表情。トニーや康介との出会いを経
て、彼女は以前とは違う孤独との向き合い方ができるようになったのではない
でしょうか。ルイの成長を感じさせるとともに、人と人とが出会うことの素晴
らしさが伝わってきます。もちろん、そこにもおいしいスープが！
主演の坂井真紀に加え、西島隆弘、藤竜也の３人が絶妙のハーモニーを奏でて
います。加賀まりこをはじめ脇役陣も魅力的。
原作は阿川佐和子の同名小説。監督は瀧本智行。『犯人に告ぐ』『イキガミ』
といった過去の作品とは違うタイプの作品で、ちょっとビックリ。
ほのぼのと心を温めてくれます。しかも、ただ心地よいだけでなく、人生の陰
影も感じさせる上質な映画です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
（ほのぼのとした雰囲気で心地よくなれる映画。ただの癒し系映画とは違う魅
力があります。心がささくれ立っている時などには特にオススメ。）
（田中ひろあき（ぽち））
2010年10月4日（日）新宿ピカデリーにて。午後2時10分の回
[「す」のページ] |
|