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サウスバウンド
（2007年 日本）（上映時間1時間54分）
監督・脚本：森田芳光
出演：豊川悦司、天海祐希、北川景子、田辺修斗、松本梨菜、松山ケンイチ、
平田満、吉田日出子、加藤治子、村井美樹
＊アミューズCQN、新宿ガーデンシネマほかにて全国公開
ホームページ http://southbound-movie.com/
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＜ストーリー＞
東京・浅草に住む上原一家は５人家族。小学六年生の二郎は、仕事もせずに騒
動ばかり起こす元過激派リーダーの父・一郎（豊川悦司）の存在を恥ずかしく
思っていた。そんなある日、上原家は母・さくら（天海祐希）の提案で、一郎
の故郷である西表島へ引っ越すことになる。地元民に歓迎される上原家だが、
住み着いた場所は開発業者が買収済みの土地で……。
＜レビュー＞
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笑えるコメディー映画を通して今の日本に強烈なメッセージ！
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いまどき"過激派"なんて死語。"学生運動"などというと、大学生の運動会か何
かと間違われそうなご時世です。
そんな中、今も反権力を標榜し、周囲とバトルを繰り広げる元過激派のリー
ダーが、この物語の主人公・上原一郎。まさに天然記念物ものの存在です。
そして、その妻・さくらも、かつての学生運動の闘士。学生たちから「ジャン
ヌ・ダルク」と呼ばれる憧れの存在でした。
そんな二人が駆け落ち同然に結婚して、誕生したのが洋子、二郎、桃子という
三人の子供。そのうちの小学校六年生の二郎の視線で綴られるのがこの物語。
前半は、東京・浅草に住む一家が一郎の破天荒な言動によって、周囲と摩擦を
起す姿が描かれます。
なんせこの父ちゃん、ケタはずれに壊れているのです。何かというと「ナンセ
ンス！」と相手を一刀両断。年金の支払いを求めに来た区役所のおばちゃんに、
「そんなら国民やめちゃおう！」と言い放ちます。家庭訪問に来た二郎の先生
には「日本に徴兵制は必要か？」と質問しちゃったりします。その強烈な個性
には、あきれるのを通り越して笑うしかありません。そういう過激なことをマ
ジな顔で言うのではなく、ニコニコ笑いながら言うんですもの。
一郎役のトヨエツが最高にハジケまくっています。これぞ怪演！？ それを包
み込むような天海祐希の大らかな演技もいいですねぇ〜。
これほどデタラメな父ちゃんだから、息子の二郎は嫌で嫌でたまりません。と
はいえ、その二郎も学校での理不尽な出来事に対して、立ち向かうことになり
ます。さらに、さくらと実家との関係、その背後にある彼女の過去なども少し
ずつ明らかになります。
後半は、一家が沖縄の西表島へと移住します。ボロボロの家を改装して住み着
き、東京ではグータラだった父ちゃんが一生懸命に働きます。しかし、実はそ
の場所は東京の開発会社が買収した土地で、また大騒動が……。
原作は奥田英朗の小説。元過激派リーダーという設定からして子供が小学生と
いうのは、やや無理な感じもしますが（いくら年の離れた姉がいるとはいえ）、
それは別にしても、小説の映画化にありがちな駆け足の展開が多いのが気にな
るところ。
でも、まあ文句ナシに面白い映画ですヨ。しかも、ただ笑えるだけでなく、メ
ッセージが明確なんです。
前半では、二郎が父を嫌うのに合わせて、観客も「あんな父ちゃんがいたら大
変ね」と同情。しかし、観終わると「うーむ、父ちゃんの言っていることにも
一理あるかも……」と思うようになる。そのあたりの持って行き方が秀逸。
一郎は自ら言います。「お父さんを見習うな！」。そのうえで世の中のおかし
なことに異議を唱える大切さを説きます。何に対しても「そんなことしてもム
ダ」と考えがちな最近の日本人に対して、痛烈なメッセージを放っている映画
です。それもユーモアのオブラートに包んで、押し付けがましくなく訴えてい
るところが見事。
結末はファンタジー風。そこに至るまでに子供たちの目線で、沖縄の美しい自
然や大らかな風土が描かれているから、「それもアリかな」と感じました。
監督はベテラン森田芳光。過去の作品には、大仰な演出も目立つのですが、肩
の力が抜けている感じの最近の作品はなかなかの出来。
さあて、たまにはボクらも叫んでみますか。「ナンセンス！」
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（楽しく笑えるコメディー映画のワクを維持しつつ、メッセージ性も併せ持っ
た作品。トヨエツはじめ役者の演技も魅力。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年10月6日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時15分の回。
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