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セントアンナの奇跡（MIRACLE AT ST. ANNA）
（2008年 アメリカ・イタリア）（上映時間2時間43分）
監督：スパイク・リー
出演：デレク・ルーク、マイケル・イーリー、ラズ・アロンソ、オマー・ベン
ソン・ミラー、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ヴァレンティナ・チェ
ルヴィ、マッテオ・スキアボルディ、セルジョ・アルベッリ、オメロ・アント
ヌッティ、ルイジ・ロ・カーショ、 ジョン・タトゥーロ、ジョセフ・ゴードン
＝レヴィット、ジョン・レグイザモ
＊TOHOシネマズシャンテ、テアトルタイムズスクエアほかにて公開
ホームページ http://www.stanna-kiseki.jp/
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＜ストーリー＞
1983年のニューヨーク。定年間近の郵便局員が、突然、客の男を射殺する。そ
の事件のナゾをとく鍵は1944年のイタリアにあった。当時、アメリカ軍の黒人
部隊"バッファロー・ソルジャー"は、イタリアでナチスと戦っていた。その中
でヘクター、スタンプス、ビショップ、トレインという4人の黒人兵が部隊とは
ぐれ、敵陣で孤立してしまう。アンジェロという傷ついた少年を救った彼らは、
その手当てのためにトスカーナの小さな村へ身を寄せるのだが……。
＜レビュー＞
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ラジカルな姿勢はそのままに円熟を感じさせるスパイク・リー監督
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スパイク・リー監督の新作は、すぐれた反戦映画であり、反人種差別映画であ
り、ミステリーであり、ファンタジーであり、そして人間の不思議な縁を描い
た人間ドラマでもあります。
物語の発端となるのは、1983年のニューヨーク。定年間近の黒人の郵便局員が、
窓口に来た客をいきなり射殺します。いったい彼はなぜそんなことをしたのか。
その秘密は1944年のイタリアにありました。
というわけで、そこからは第二次世界大戦末期のイタリアが舞台になります。
ナチスドイツＶＳアメリカ軍という図式の中で、アメリカ軍の黒人だけで組織
された部隊"バッファロー・ソルジャー"の4人の兵士が、部隊とはぐれてしまい
ます。途中でアンジェロというケガをしたイタリア人少年を救った彼らは、ト
スカーナの小さな村へもぐりこみます。
黒人だけの部隊"バッファロー・ソルジャー"の存在や、ナチスによるセントア
ンナの大虐殺などの史実を織り込みながらも、架空の物語を大胆に展開してい
ます。
黒人兵士たちと少年との友情、兵士たちと村人との交流、白人の上官との対立
や黒人同士のすれ違い、ナチスに立ち向かうパルチザン内部の複雑な人間模様
……。2時間43分の中に様々なドラマが凝縮されています。
戦闘シーンのリアルさは壮絶なもの。体がバラバラになり、血にまみれて死ん
でいく多数の兵士たちの姿が、容赦なく描き出されます。
その一方で、子供が起こす不思議な奇跡や死者が現れて生者を救う場面など、
ファンタジー的な要素も登場します。
そんな様々な要素をバランスよく配しているので、どのドラマも素直に心に響
いてきます。
全編英語で通すのではなく、イタリア語、ドイツ語が混じった会話が交わされ
るのも、ウソがなくて好感が持てます。
クライマックスには、4人の兵士たちにとって過酷な運命が待っています。そし
て、その後に訪れる奇跡……。たくさんの人が殺される映画なのに、最後はさ
わやかな感動を残してくれます。
観終わるとやはり、人種差別や戦争に反対するスパイク・リー監督の思いが強
く伝わってきました。ありがちな単純化されたメッセージではなく、多様なド
ラマを通して訴えたことで、よけいにそれが伝わってきました。
欲を言えばファンタジー的な側面がもっとあってよかった気がするし、後半が
やや駆け足になってしまったのが残念ですが、見応えは十分です。これまでの
ラジカルな姿勢はそのままに、円熟を感じさせるスパイク・リー監督でした。
主演は『きみの帰る場所／アントワン・フィッシャー』のデレク・ルーク。ジ
ョン・タトゥーロが刑事役でチラッとだけ出てくるのも印象的。
《ぽちの満足度》
★★★★☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（実話を使いながら様々なドラマを展開させた中身の濃い映画。反戦・反人種
差別のメッセージも伝わります。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2009年7月25日（土）テアトルタイムズスクエアにて。午後12時50分の回
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