シリアナ
(SYRIANA)


(2005年 アメリカ)(上映時間2時間8分)
監督・脚本:スティーブン・ギャガン
出演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ジェフリー・ライト、クリ
ス・クーパー、ウィリアム・ハート、アズハール・ムニール、ティム・ブレイ
ク・ネルソン、アマンダ・ピート、クリストファー・プラマー
*渋谷東急ほかにて全国公開
ホームページ http://wwws.warnerbros.co.jp/syriana/
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<ストーリー>
中東で活動を続けてきたCIAベテラン諜報員ボブ・バーンズ(ジョージ・クルー
ニー)は、テヘランでの武器商人暗殺を手がける。しかし、取引現場に潜入し、
武器商人の爆殺に成功した後で、取引相手の男がミサイルを手に逃走してしま
う。その頃、アメリカではコネックス社とキネーン社という石油会社の合併を
めぐって、司法省が動き出していた……。

<レビュー>
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陰謀渦巻く石油をめぐる国際ドラマを臨場感タップリに活写
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スケール、デカ過ぎぃ〜〜〜!!
世界を舞台に石油をめぐる暗闘ぶりを描き出した異色の映画です。
ペルシャ湾岸の石油利権をめぐって、巨大石油会社、CIA、アメリカ司法省、
アラブの王族、貧しいテロリスト、エネルギーアナリスト、弁護士などが、表
に裏にあれやこれやと動き回ります。

前半は、そうした人々の動きを同時並行で描きます。まあ、石油が絡んでいる
ことはわかるのですが、彼らにいったいどういう関係があるのか、ナゾが増幅
しつつ進んでいくので、サスペンス的な興味がかき立てられます。

後半は、それまでの動きがレバノンやペルシャ湾岸での出来事に集約されて、
とんでもない構図が明らかになっていきます。

全編で手持ちカメラを多用した臨場感あふれる映像。セコいドキュメンタリー
よりも、ずっとずっとドキュメンタリー的な破格の映像です。なんだかソダー
バーグ監督の『トラフィック』と似たテイストだと思ったら、監督&脚本は
『トラフィック』の脚本家のスティーブン・ギャガンだそうです。なるほどね
ぇ〜。

後半になって、バラバラだった要素が一本の糸につながっていくあたりの脚本
は、実によくできています。

いずれ枯渇するとわかっているのに、石油をめぐってスサマジイ出来事をくり
広げる関係者たち。ワイロ、暗殺、テロ、裏切り、拷問、裏取引……。「そん
なに石油が大事ですかぁ〜〜〜!!!!!」と思わず叫んでしまいそうになり
ました。

てなことを言っているボクだって、石油を消費しているわけで、けっして無関
心ではいられません。

CIA諜報員を演じたジョージ・クルーニーはこの映画でオスカー助演男優賞
をゲット。アナリスト役のマット・デイモンともども、最近はこのテの社会派
映画がピッタリ似合っています。
そのほか、ジェフリー・ライト、クリス・クーパー、クリストファー・プラ
マーなどの演技派の存在感も光ります。

まあ、あまりにもスケールが大きくて、いろんなことを詰め込んでいるので、
消化不良の部分もあります。また、ラストもあまりにもあっけない感じ。
話が複雑で、しかも全編ドキュメンタリータッチなので息つく暇がなく、観終
わってズシリと疲れるところも、人によっては敬遠しそう。

ですが、これだけのネタをきちんとまとめて、リアルで厚みのある映画に仕
上げているのは見事なもの。
過剰な盛り上げもなく、今世界で起きていることを観客に突きつけようとした
気概だけでも、十分に評価できる映画です。見応えはタップリ。

日本じゃ、こういう映画はまずできないでしょうねぇ〜。石油をめぐる利権と
かいうと「プロジェクトX」みたいなサクセスストーリーになっちゃったりし
てサ。

ちなみに、タイトルの『シリアナ』とはイラン・イラク・シリアの三国が、一
つの民族になることを想定した中東再建プロジェクトの名称だそうです。

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆(+1/2★)
(社会派ネタの映画が好きな人はもちろん、サスペンス好きにも楽しめそうな
映画。ただしメチャクチャ疲れます)
                           <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2006年3月4日(土)テアトル池袋にて。午後1時30分の回。


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