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タイヨウのうた
（2006年 日本）（上映時間１時間59分）
監督：小泉徳宏
出演：ＹＵＩ、塚本高史、麻木久仁子、岸谷五朗、通山愛里、田中聡元、小柳
友、ふせえり、小林隆、マギー、山崎一
＊東劇、池袋シネマサンシャインほかにて全国公開
ホームページ http://www.taiyonouta.jp/
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＜ストーリー＞
海辺の街に暮らす16歳の少女、雨音薫（ＹＵＩ）は、太陽の光にあたれないＸ
Ｐ（色素性乾皮症）という病気のため、昼間眠り、夜に活動する生活を送って
いた。そんな彼女の楽しみは、毎朝サーフボードを抱えて海へと向かう藤代孝
治（塚本高史）を部屋の窓から眺めること。ある夜、いつものように公園で弾
き語りライブをしていた薫は、目の前を通り過ぎる孝治に気づく。衝動的に追
いかけて愛の告白をしてしまう薫だったが……。
＜レビュー＞
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ベタな難病ものではなく、キラキラと輝く青春を描いたからこそ泣ける映画
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いわゆる「難病モノ」の泣かせる映画です。難病モノは、"限りある命"が大き
なポイントになるわけですが、この映画では主人公が「太陽に当たると死
ぬ！」という病気であるがゆえに、なおさら切なく、悲しいお話になっていま
す。
とはいえ、それを真正面からベタベタに描いているわけではありません。暗い
描写はあまりありません。むしろ青春のキラキラ輝く日々を淡々と、そして生
き生きと描き出しているのです。
ＸＰという難病を持つ主人公・薫が、家の窓からいつも見ていたサーフィン好
きの高校生と偶然出会い、告白をするものの、自分の病気のことがあって……
という展開。
海辺の町、そしてサーフィンとくれば、これはもう青春映画の王道です。そん
な舞台設定を使いつつ、難病の少女と高校生との淡く切ない恋を描いていきま
す。
ホントにかわいらしくて、思わずニコッとしてしまうような、ごくフツーの男
女の恋愛なんですヨ。
主人公が明るいキャラなのもいいですね。おかげで難病モノにありがちなジメ
ジメさがまったくありません。彼女が好きになる高校生、両親、友人の女の子
など周囲の人々も、みんな明るいキャラです。そこに時に差す影がなんともツ
ライ……。
そして、薫がストリートミュージシャンというのも大きなポイント。彼女の歌
がとても印象的に使われています。
主演のＹＵＩは女優ではなく、シンガーソングライター。はっきりいって演技
は超ヘタです。しかし、そのヘタさを素朴さ、純情さに変えていく脚本と演出
に感心させられました。
そして、何より彼女には歌という強い武器があります。それを要所要所で生か
していくワケです。音楽の力ってやっぱり大きいよねぇ〜。
やがて薫の病気が進行してしまいます。それをギターのコードが押さえられな
くなったことによって見せるのも、巧みな仕掛けです。
クライマックスのＣＤのレコーディング風景や、真昼の砂浜でのシーンなどが
胸にググッときます。そこに至るまでのキラキラした青春が、実に有効な伏線
となっています。徹頭徹尾、暗さを排除して淡々と描いていることが、逆に切
なさを募らせて、涙を誘ってしまうのです。
さりげなく描かれるラストの後日談もいいですねぇ〜。ここでもＹＵＩの曲が
効果的に使われます。
小泉徳宏監督は、これが長編デビューだそうですが、とてもそうは甘えない卓
越した演出ぶり。裏側を見ると、どうもＹＵＩの売り出し映画っぽくて、「い
ろいろ制約もあったのでは？」と考えてしまいますが、そういう中でよくこれ
だけの映画に仕上げたと思います。坂東賢治の脚本もなかなかのもの。
恋人役の塚本高史、両親役の岸谷五朗、麻木久仁子、友人役の通山愛里もピッ
タリのキャストです。
『世界の中心で、愛をさけぶ』のようなベタベタな感動物語が好き人は、おそ
らくこの映画に満足できないのではないでしょうか。あまりにも淡々と、青春
の日々を切り取っていて、およそ泣かせようという意気込みは感じられません
から。
しかし、ボクのようにベタベタした映画だと、どうにもシラけて泣けない人間
は、こういう映画のほうが泣けてしまうのですヨ。青春のキラキラがあるから
こそ、主人公の限りある命が切ないのです。だから、涙がポロリ。それだけ神
経が繊細だというのは自画自賛かしら？ （＝⌒▽⌒＝）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（青春をみずみずしく描いたことで、かえって涙を誘う映画。難病を扱った映
画の中ではかなりよくできた作品です）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2006年６月20日（火）池袋シネマ・サンシャインにて。午後１時20分の回
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