単騎、千里を走る。
(千里走単騎/RIDING ALONE FOR THOUSANDS OF MILES)


(2005年 中国・日本)(上映時間1時間48分)
監督:チャン・イーモウ
出演:高倉健、リー・ジャーミン、ジャン・ウェン、チュー・リン、ヤン・ジ
ェンボー、寺島しのぶ、中井貴一
*日劇2ほか東宝系にて全国公開
ホームページ http://www.tanki-senri.com/
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<ストーリー>
漁師の高田(高倉健)は、息子・健一が倒れたと聞き、上京する。だが、2人
には確執があり、健一は面会を拒否。健一の妻・理恵(寺島しのぶ)は、民俗
学研究家である夫の仕事ぶりを紹介したビデオテープを渡す。そこには、健一
が中国の奥地を訪ね、民俗舞踊を研究する姿が映し出されていた。その中で健
一は李加民という舞踏家に「来年、"千里走単騎"を撮りに来る」と約束してい
た。高田は、息子の約束を果たすため、単身中国に渡るのだが……。

<レビュー>
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チャン・イーモウ+高倉健で描く、言葉を超えた人々の心の交流
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最近は、『HERO』『LOVERS』と超エンタメ映画が続いたチャン・イーモウ監督。
とはいえ、もともとは『紅いコーリャン』『菊豆』『初恋のきた道』『あの子
を探して』などの人間ドラマを撮っていた人。今回は『初恋のきた道』『あの
子を探して』の頃に戻ったようなポカポカした雰囲気の温かな映画。しかも、
主演はなんと高倉健。2人は15年来の友人だそうです。

今回健さんが演じるのは漁師・高田。確執があり疎遠だった息子が倒れたと聞
き会いに行くものの、面会を拒否される。傷心の彼に息子の妻がビデオテープ
を渡す。そこには、息子が中国で民族舞踏を研究する姿が映っていた。高田は、
息子がビデオの中で約束していたことを果たすために、単身中国に渡る……。

て、何だか強引です。いつものように寡黙な健さんですが、いつもと違って猪
突猛進。突然、ビデオ撮影に中国に行くなんて。だいたいビデオなんか撮った
ことあるんスか???
おまけに、寡黙とはいえ、今回は心情を独白でドンドン吐露していく。な、な
んだ、このニュー健さんは??? (゜〇゜;)?????

でも、まあやっぱりスゴイ存在感。不自然だったり、強引なところも、健さん
が演じるとその存在感に圧倒されて、素直に受け入れてしまいそう。

前半は、中国に渡った健さんが、仮面劇を撮影するために四苦八苦。お目当て
の役者が刑務所に入ってしまったため、大変な苦労をします。言葉も満足に通
じない中国で、通訳ができる女性ガイド、あまり日本語のできない現地ガイド
に協力してもらい、何とか目的を果たそうとします。

ギクシャクする中国人との関係が、少しずつほぐれていき、やがて友情らしき
ものが芽生えるところはなかなか感動的。最初は面倒くさがっていた人たちも、
やがて健さんに協力するようになります。

というわけで、途絶していた息子との関係を取り戻すかのように、一生懸命に
息子の約束を果たそうとする健さん。ところが、ドラマは途中から全然違う方
向へ進みます。スッゴイ田舎まで行って、ある子供を連れてこようとするんで
すよね。前半までの健さんと息子との情愛が、健さんと他人の子との心のふれ
あいにチェ〜ンジ。な、なんだ? この急転換は? (゜∇゜;)

でも、ここからはチャン・イーモウ節が全開で、見応えがあります。美しすぎ
る中国の自然をバックに、素朴で元気な地元民と健さんの温かな心の交流が
淡々と描かれます。屋外の何十メートルも続く食卓でみんなが食事する場面と
か、まるでグランドキャニオンみたいなところで健さんと子供が助けを待つと
ころとか、印象的なシーンがタップリ。

特に健さんが子供をギュッと抱きしめる姿は、「言葉なんかなくてもわかりあ
えるんだ!」と思わせてくれます。漁師の笛もいいよなぁ〜。 (⌒−⌒)

クライマックスの仮面劇も、風情のあるシーンで、観終わってポカポカした気
分になれました。

……なのだが、イマイチしっくりこないのはなぜだ?
うーん、やっぱり、健さんとチャン・イーモウの持つ世界が、うまくブレンド
していないんだよなぁ〜。言葉が通じない中でのコミュニケーションの難しさ
とか、異邦人の孤独とかをあぶり出すために、わざとそうしているのかもしれ
ないけど。それにしても、ねぇ〜。

それから、日本部分は『駅 STATION』や『鉄道員(ぽっぽや)』の降
旗康男監督が演出しているのだが、中国部分と全然違うタッチなのも気になっ
てしまいました。寺島しのぶの重たい演技も、チャン・イーモウの映画には似
合わないよ〜っ、と。

でも、まあチャン・イーモウ節はサクレツしているので(特に後半)、『初恋
のきた道』や『あの子を探して』あたりが好きな人は、けっこう満足できるの
ではないでしょうか。

まあ何にしても高倉健はスゴイ役者です。「不器用ですから」で、そんなに演
技が巧くないように思われてるけど、とんでもない。「サヨナラ」の手の振り
方だけで心の奥を表現できる役者は、そうそういませんヨ。

《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆(+1/2★)
(良い映画だとは思うものの、期待が大きかっただけに物足りなさもやや残り
ました。チャン・イーモウや健さんの良さは出ているので、2人が好きな人は
観ても損はないと思いますが。)
                           <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2006年1月28日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分の



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