鉄コン筋クリート


(2006年 日本)(上映時間1時間51分)
監督:マイケル・アリアス
声の出演:二宮和也、蒼井優、伊勢谷友介、宮藤官九郎、大森南朋、岡田義徳、
森三中、納谷六朗、西村知道、麦人、田中泯、本木雅弘
* 丸の内TOEI2、渋谷東急ほかにて全国公開
ホームページ http://tekkon.net/
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<ストーリー>
義理と人情の街・宝町を自由に飛び回る2人の少年、クロとシロは一心同体。
恐喝や窃盗で日々の糧を得ている。そんなある日、昔なじみのヤクザ・鈴木が
街に戻ってくる。宝町に、再開発計画が進行し始めたのだ。自分たちの街を守
ろうとするクロとシロに冷酷な"蛇"の魔の手が迫ってくる……。

<レビュー>
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人間の心の奥底に迫る圧巻のクライマックス! ヘビー級のアニメ
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「青い春」「ピンポン」の松本大洋のコミックが原作。正直なところ、この人
の絵のタッチがあまり好きでない筆者は、この原作も含めてほとんど読んだこ
とがありません。異能の作家であることは理解していますが。

というわけで、先入観なしに観たのですが、これがスサマジイ映画でした。
まず独特の世界観に目を奪われました。舞台となる宝町は過去のような現代の
ような未来のような不思議な町。一応日本となっているものの、無国籍風でも
あります。どこかで見たようでもあり、初めて見る風景のようでもあり……。

そこを根城にした少年2人。クロとシロ。クロは悪事を働くワルガキですが、
シロを守り続けます。一方シロは純粋無垢な性格を持つ少年。一見正反対のよ
うな2人はお互いを補うように助け合って生きています。

しかし、そんな2人の前にヤクザたちの魔の手が迫って……。

というので、ワルガキ2人の友情物語にヤクザや警察が絡んだハイパーアクシ
ョンなのかと思って観ていたのです。バイオレンスシーンもタップリだし。

主人公2人をはじめ脇役(特にヤクザの鈴木と木村)までキッチリとキャラク
ターが設定されているし、映像が見事だし(シロの心象風景なども美しい)、
セリフも含蓄があるし、まあまあ楽しめる話じゃないですか。でも、結局のと
ころ何を描きたいのさ???

てな感じていたのですが、いやぁ〜、途中からスゴイことになりましたねぇ〜。
シロと離れた後のクロがどんどんダークになって、コワれていくあたりから、
「これはもしかしたらとんでもない映画かも……」と思い始めたのです。

そして、それが確信に変わったのはクライマックス。圧巻としかいいようのな
いパートです。そこで描かれるのは人間の内面です。精神世界です。善と悪、
良心と邪心、そんな二律背反の存在を同時に抱える人間の心の内を、鉄槌で直
撃しやがるのです。このクライマックスは。

いえいえ、人間心理のみならず、宝町という街をはじめすべては微妙なバラン
スの上に成り立っています。陰と陽、正義と悪、表と裏。そういうものが崩れ
ると大変なことになってしまうのです。それを力感にあふれた映像でグイグイ
と訴えかけてきます。

何なんでしょ。この深さは。ある意味、哲学を語っているのかもしれません、
この映画は。地球に落下するクロの姿が目に焼きついてしまいました。

といっても、これはあくまでも筆者の見方で、観る人によって解釈は様々でし
ょう。表面的にはクロとシロの友情物語の形を取りながら、その奥底では深く
て重たいものが流れているのは間違いありません。

声の出演陣も豪華ですが、シロ役の蒼井優にはビックリでした。声だけでこん
なに存在感を出せるのだから、やっぱりスゴイな。このコは。

ちなみに、バイオレンスシーンはけっこうエグいし、ストリップ劇場とかも出
てくるし、お子様の観るアニメではないので念のため。ていうか、この深さは
お子様にはさすがにわからんでしょう。久々に超ヘビー級のアニメを目撃しま
したね。KO覚悟で観に行くべし!?

《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆(+1/2★)
(後半の内面描写は圧巻。欠点もあるけれど、それを上回る魅力を持った映画
です。原作を知らない人も一見の価値あり)
                            <ぽち>
〔鑑賞データ〕
2006年12月23日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後5時の回


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