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転々
（2007年 日本）（上映時間1時間41分）
監督・脚本：三木聡
出演：オダギリジョー、三浦友和、小泉今日子、吉高由里子、岩松了、ふせえ
り、松重豊、 鷲尾真知子、石原良純、岸部一徳、広田レオナ
＊ アミューズＣＱＮ、テアトル新宿ほかにて公開
ホームページ http://tokyosanpo.jp/indexp.html
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＜ストーリー＞
84万円の借金を抱える大学８年生の竹村文哉（オダギリジョー）は、取立て屋
の福原（三浦友和）から奇妙な提案を持ちかけられる。吉祥寺から霞ヶ関まで
歩く福原の散歩に付き合えば、100万円をくれるというのだ。警戒しつつも、仕
方なく誘いに応じて福原とともに出発する文哉だったが……。
＜レビュー＞
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脱力系の笑いと、しみじみしたドラマが結びついた不思議なロードムービー
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テレビの『時効警察』シリーズに加え、『亀は意外と速く泳ぐ』『イン・ザ・
プール』『図鑑に載ってない虫』などの映画作品でもおなじみの三木聡監督の
新作。
『時効警察』の脱力系の笑いが好きなボクですが、過去の三木監督の映画に関
してはイマイチでした。密室性の強い笑いが、映画館の広いスクリーンを持て
余しているように思えて、どうも違和感があったのです。ドラマらしいドラマ
もなかったしネ。
しかし、この映画は過去の作品とは比較にならないほどの出来で、面白く観る
ことができました。
借金に追われる大学生が、取立て屋の男から「霞ヶ関まで散歩に付き合えば100
万円やる」と言われて、仕方なく一緒に歩き出す。その行く先々での出来事を
描いたロードムービー。
さすがに三木監督の映画だけに、脱力系の笑いが満載。「なんでこんなこと思
いつくんだ？？？」てなネタの連続でクスクスと笑えます。例えば、「岸部一
徳を見ると良いことがある！」なんて話が出てきて、本当に本人が登場したり
……。主人公の大学生・文哉がネコババしたボストンバッグに入っていたのが
大量のダルマと折れた天狗の鼻だったとか……。
三木作品の常連、岩松了、ふせえりに松重豊が加わったトリオによるオバカな
トークも味があります。おまけに、麻生久美子が『時効警察』のまんまの婦警
姿で、オダギリジョーと遭遇するワンシーンなんて、『時効警察』ファンには
たまりません。いや、ホント、全編くだらねぇ〜笑いの連続です。
ただし、今回は、今までと違って本筋のドラマもきちんと描かれます。散歩を
する２人の男は、それぞれがかなり重たいものを背負っています。取立て屋で
散歩の首謀者の福原は、ある重大な事件を起こしてしまい、思い出の地を訪ね
た後で自首しようと考えています。一方、彼に同行する文哉は幼い時に両親に
捨てられた孤独な男。
そんな２人による散歩は、よく考えればシビアなはずなのに、なんだかホンワ
カして温かい雰囲気が漂います。
後半に描かれるのは、福原、文哉に、場末のバーのマダムとその姪が加わった
擬似家族のホームドラマ。文哉はそこで家族の温かさを感じ始めます。しみじ
みとした情感あふれるドラマです。
ラストもまたホンワカした終わり方。ちょっぴり苦さも感じられて、独特の余
韻に包まれてしまいました。
うーむ、三木監督ったらやればできるじゃん！ 原作の藤田宜永の小説がそれ
だけ面白いのかもしれませんが、それにしてもなかなかのもの。これまでの脱
力系の笑いに、しみじみドラマも加わった魅力的な映画です。
役者では、福原役の三浦友和がいい味を出しています。文哉役のオダギリジ
ョー、バーのママ役の小泉今日子もさすが。
そして、彼女の姪役の吉高由里子がなかなか良いのですよ。天然なのか演技な
のかわからないのですが、不思議な魅力を持っています。蜷川幸雄が監督する
『蛇にピアス』の主役に抜擢されたそうで、今後が楽しみなコです。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（しみじみとした雰囲気のコメディ。三木監督の映画では一番良いかも。ただ
し、脱力系の笑いが多いので、それについていけないとツライと思います。）
（ぽち）
〔鑑賞データ〕
2007年11月20日（火）テアトル新宿にて。午後4時30分の回。
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