|
ザ・ロード（THE ROAD）
（2009年 アメリカ）（上映時間1時間52分）
監督：ジョン・ヒルコート
出演：ヴィゴ・モーテンセン、コディ・スミット＝マクフィー、ロバート・デ
ュバル、ガイ・ピアース、シャーリーズ・セロン
＊TOHOシネマズシャンテほかにて全国公開
ホームページ http://www.theroad-movie.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
ほとんどの生物が死に絶え、文明が崩壊した近未来のアメリカ。父（ヴィゴ・
モーテンセン）と息子（コディ・スミット＝マクフィー）は、南へ向かって旅
を続けていた。食糧はほとんどなく飢えと寒さに苦しみ、人肉を食らう暴徒た
ちに狙われるなど過酷な旅の中で、父は息子をひたすら守り抜くのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
極限状態の中の父子の絆が胸を打つ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アカデミー作品賞受賞作『ノーカントリー』の原作者としても知られる、現代
アメリカ文学の巨匠コーマック・マッカーシーによるピュリッツアー賞受賞小
説を映画化した作品。
舞台は近未来のアメリカ。何らかの原因でほとんどの動植物が死に絶え、荒廃
した世界を南へ向かって旅する父と幼い息子。その旅の途中で２人が遭遇する
数々の出来事を描いたロードムービーです。
同じく世界の終末を描いた作品として、ほぼ同時期にデンゼル・ワシントン主
演の『ザ・ウォーカー』も公開されましたが、あちらはかなりエンタメ性の高
い映画。しかし、こちらは地味で静かな映画。アクションやスペクタクルもあ
りません。
父子の旅は過酷なもの。食糧はほとんどないため常に飢えに苦しみ、寒さにも
悩まされます。そして何よりも恐ろしいのが人間を食らうようになった人々の
襲撃。いつ誰が現れるかもわからず、それが善人なのか悪人なのかもわからな
いという恐怖。そもそも極限状態の中で、善悪の境界さえ揺らいでいます。
そんな中で、父親は何とか息子を自立させようと色々なことを教えます。子供
はそれに応えようと健気に振る舞います。父子の絆の強さが胸を打ちます。
最初は父親に従っていた息子ですが、そのうちに自分の意見も主張するように
なります。そんな息子の成長ぶりも描かれます。
父子の現在進行形のドラマと並行して、かつて２人が旅に出る前の母（シャ
リーズ・セロン）が健在だった頃の回想も織り込まれます。
映像が見事です。昼でも薄暗い世界をリアルに描写した独特の映像。近未来世
界の暗さ、寒々しさがヒシヒシと伝わってきます。カメラアングルもユニーク
で、主人公たちが感じる緊張感や恐怖感もそのまま伝わってきます。その中で
唯一明るく輝くのが「火」。火は父子の旅の大きなテーマになっています。
クライマックスは悲しくて切ないシーン。父子の情愛が胸を打ちます。そして、
最後にはその後の旅へとつながる出会いを用意。かすかな希望とともにエンド
ロールとなります。
父親役のヴィゴ・モーテンセンの迫真の演技はさすがです。そして、息子役の
コディ・スミット＝マクフィーの熱演も印象的。まさに天使のような子供です。
出番は少ないながら、ロバート・デュバル、ガイ・ピアースもいい味を出して
います。
極限状況の中での父子の絆に心を揺さぶられるロードムービー。ハデさはまっ
たくないけれど、心に染み入る深みのある映画です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（変にエンタメ性を高めずに、父子の苦難の旅を正面から描いたところに好感。
個人的には『ザ・ウォーカー』よりこちらに軍配。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年７月4日（日）TOHOシネマズシャンテにて。午後2時10分の回
[「さ」のページ] |
|