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トイレット
（2010年 日本・カナダ）（上映時間1時間49分）
監督・脚本：荻上直子
出演：アレックス・ハウス、タチアナ・マズラニー、デヴィッド・レンドル、
サチ・パーカー、もたいまさこ
＊新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマほかにて全国公開
ホームページ http://www.toilet-movie.com/
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＜ストーリー＞
引きこもりの兄モーリー（デヴィッド・レンドル）、オタクの弟レイ（アレッ
クス・ハウス）、人を小ばかにした目で見る妹リサ（タチアナ・マズラニー）
の３兄妹は、母が亡くなったことから実家で同居することになる。そこには、
猫のセンセーと母が亡くなる直前に日本から呼び寄せた祖母「ばーちゃん」
（もたいまさこ）もいた。英語が話せないばーちゃんはまったく口をきかず、
自室で過ごす毎日。おまけに毎朝トイレにこもって、出てくると必ず深いため
息をつく。それでも少しずつ彼女と３兄妹は、奇妙な交流を重ねていくのだが
……。
＜レビュー＞
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もたいまさこの独特の存在感が絶品
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『かもめ食堂』『めがね』の荻上直子監督の新作は、これまでの作品とは趣を
変えて、全編カナダで撮影した家族のドラマです。もたいまさこ以外は、キャ
ストやスタッフもほとんどが現地の人たちで全編英語。
冒頭は３兄妹の母親の葬儀のシーン。その３兄妹とは、パニック障害で引きこ
もる兄モーリー、プラモデル好きのオタクの弟レイ、そして人を小ばかにした
目で見る妹のリサ。母の死をきっかけに、彼らは実家で一緒に暮らすようにな
るものの、そこにはセンセーという名の猫と、母が生前に日本から呼び寄せた
祖母もいて……。
祖母の「ばーちゃん」を演じるもたいまさこが絶品です。セリフはほとんどナ
シ。表情やしぐさだけで、３兄妹に多くのことを伝えます。最初はいかにも怪
しげだった彼女が、やがて３兄妹にとって温かでかけがえのない存在に変わっ
ていくさまが、見事に表現されています。
この「ばーちゃん」と３兄妹が少しずつ親しくなって交流を続けるうちに、そ
れまでダメダメだった３兄妹が大きく前に向かって歩み出すというのがこのド
ラマの肝。いわば家族の再生の物語です。
それを彩る小道具の数々もユニークです。兄モーリーは母の遺したミシンとピ
アノ、弟レイはウォッシュレット、妹リサはエアギターなど、彼らの背中を押
すアイテムが効果的に使われ、それぞれのエピソードが積み重ねられていきま
す。
全編に散りばめられた、ほほえましくてユル〜イ笑いも印象的。ところどころ
で出てくる猫のセンセーもいい味を出しています。
過去の荻上作品と同様に、おいしそうな食べ物が登場するのもこの映画の特徴。
特に、ばーちゃんが作るギョーザが、家族の絆にとって重要な役割を果たして
います。
クライマックスは兄モーリーの大チャレンジ。そこで発するもたいまさこのこ
の映画唯一のせりふが秀逸。
なかなかよくできたドラマです。ただし、家族の再生の物語としては、やや弱
い感じもしました。それぞれのエピソードは面白いけれど、それらがうまくつ
ながらず、最後まで大きな流れになっていきません。リサのエアギター挑戦話
が中途半端で終わっているのも残念。
とはいえ、そういうところも含めて荻上監督らしいかもしれません。骨太なド
ラマを構築するのではなく、飄々としたゆるい空気の中で、人間の温かさや人
と人とのつながりの大切さをさりげなく伝える。そんな世界が好きな方には、
たまらない映画でしょう。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（個人的には物足りなさも感じるものの、荻上監督らしさは十分に発揮されて
いると思います。もたいまさこの演技だけでも観る価値はありそう。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年9月8日（水）新宿ピカデリーにて。午後2時20分の回
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