冷たい雨に撃て、約束の銃弾を(VENGEANCE/復仇)


(2009年 香港・フランス)(上映時間1時間48分)
監督:ジョニー・トー
出演:ジョニー・アリディ、シルビー・テステュー、アンソニー・ウォン、ラ
ム・カートン、ラム・シュー、サイモン・ヤム
*新宿武蔵野館ほかにて公開
ホームページ http://judan-movie.com/
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<ストーリー>
初老のフランス人男性コステロ(ジョニー・アリディ)の娘アイリーンは、中
国人男性と結婚し、マカオで暮らしていた。だが、ある日、夫と2人の子ども
が惨殺され、アイリーンも重体に陥る。パリから駆けつけたコステロは、娘か
ら犯人の手がかりを聞き出し、復讐を誓う。そのために偶然出会った殺し屋3人
組に、犯人を探し出し暗殺するよう依頼するのだが……。

<レビュー>
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ジョニー・トーらしいクールでスタイリッシュなフィルム・ノワール
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『ザ・ミッション/非情の掟』『エグザイル/絆』などで知られる香港の鬼才
ジョニー・トー監督の映画。フランスの国民的歌手で俳優のジョニー・アリデ
ィを主演に起用したとはいえ、いかにもトー監督らしいフィルム・ノワールに
仕上がっています。

マカオでフランス人の女性が夫と子供を殺され、自分も一命はとり止めたもの
の重態に。パリからやってきた父親は、復讐を誓い、偶然出会った3人の殺し屋
に犯人探しと、殺害を依頼する……。

正義がワルを追い詰めるのはよくある話。しかし、この映画では主人公の依頼
を受けた殺し屋が、別の殺し屋を追うという展開。ただし、犯人は比較的早く
判明してしまい、その背後にいる人物も明らかになります。つまり、謎解きは
この映画のポイントではありません。

中心に描かれるのは殺し屋たちとコステロとの友情です。当初は金のために依
頼を引き受けた殺し屋たちですが、次第にコステロと不思議な絆で結ばれてい
きます。その中で、今はレストランオーナーのコステロも、かつては彼らと同
じような立場だったらしいことがわかります。

必要最低限のセリフで、クールに、そしてスタイリッシュに描かれるドラマ。
殺し屋たちとコステロとの友情も、そうしたタッチでごく自然に描かれます。
一緒に犯行現場を検証したあとで、食事をするシーンが印象的。それ以外にも、
要所要所で食べ物が効果的に使われています。

殺し屋たちのキャラクターもよく考えられています。3人それぞれが個性的。な
おかつ、依頼された仕事は非情に成し遂げるものの、けっして一線は越えませ
ん。たとえば、ターゲットの子供や家族を巻き添えにするのは極力避けようと
します。なるほど、彼らとコステロとの間になら、絆が生まれてもおかしくな
いと思えてきます。

やがて事件の背景にいる人物をめぐって、3人の殺し屋が壮絶なガンファイトを
展開します。その銃撃戦がなんとも「けれん味」タップリ。

しかし、最大のクライマックスはその後に訪れます。コステロが自らの娘の復
讐を遂げるとともに、もう一つの復讐を遂げるという仕掛け。しかも、そこに
至るまでには、コステロが過去の銃撃戦の後遺症で記憶障害になっていて、肝
心の復讐について忘れてしまうかもしれないという秘密が仕込まれます。最初
はやや強引な設定にも思えたものの、そのおかげで、最後のガンファイトが、
俄然盛り上がりました。

見知らぬ土地でボロボロになりながら、娘の復讐に突き進むジョニー・アリデ
ィ。彼を助ける殺し屋のリーダーのアンソニー・ウォン。どちらも渋い演技で
す。アンソニー・ウォンはフィルム・ノアールが本当によく似合います。

クールでスタイリッシュで、そして同時に熱さも感じられる映画。男たちの友
情が見応えタップリでした。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
(ジョニー・トーの映画や香港ノワールが好きな方はぜひどうぞ。)
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2010年5月16日(日)新宿武蔵野館にて。午後2時30分の回


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