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Ｖフォー・ヴェンデッタ（V FOR VENDETTA）
（2005年 イギリス・ドイツ）（上映時間２時間12分）
監督：ジェームズ・マクティーグ
出演：ナタリー・ポートマン、ヒューゴ・ウィーヴィング、スティーヴン・レ
イ、スティーヴン・フライ、ジョン・ハート、ティム・ピゴット＝スミス
＊丸の内TOEI、渋谷東急ほかにて全国公開
ホームページ http://wwws.warnerbros.co.jp/vforvendetta/
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＜ストーリー＞
独裁者サトラー議長（ジョン・ハート）が支配するファシズム国家となった近
未来のイギリス。テレビ局で働くイヴィー（ナタリー・ポートマン）は、外出
禁止時間に表を歩いていたところを自警団に見つかってしまう。だが、そこに"
Ｖ"と名乗る謎の仮面男が現れ彼女を救う。Ｖは、1605年に国王の圧政に反発し
国家転覆を図ったガイ・フォークスにならって、政府転覆を狙うテロリストだ
った。Ｖのテロ活動に巻き込まれていくイヴィーだったが……。
＜レビュー＞
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9．11後のファシズムの危機を告発した骨太のサンペンス・アクション
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1980年代のコミックを『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟が脚
本化したと聞いて、「小難しい理屈を振り回す割には、中身のないドラマなん
じゃないかなぁ〜」とあまり期待しないで観たのです。
そしたら、あなた、とんでもない。中身がぎっしり詰まったテーマ性のある重
たい映画じゃありませんこと。いやぁ〜、恐れ入りました。 ｍ（＿ ＿；）ｍ
基本は、権力によって人生をメチャクチャにされた男が復讐を果たすという、
いかにもコミックらしいアクション劇なんですよ。
でもねぇ、そこに近未来の超ファシズム国家という舞台が設定されたことで、
実に重みのある映画になってるんです。それもアメリカじゃなくて、イギリス
が舞台というのが意外でおもしろいところ。
近未来のイギリスでは、独裁者のもとに徹底した管理、抑圧が行われています。
危険思想の持ち主はもちろん、同性愛者、不治の病を持つ者などマイノリテ
ィーは社会から排斥されます。そこに謎の仮面の男「Ｖ」が登場して、政府に
対するテロを実行していきます。そして、１人の女性がその渦中に巻き込まれ
ていき、自分の内面の真実に気づいていくのです。
全編を貫くのはファシズムに対する痛烈な批判。それは時に滑稽でさえありま
す。政府の管理下にある放送局でゲリラ的に放送されたコメディー番組が、そ
れを象徴しています。しかし、それもまた政府によって弾圧されてしまうので
した。
同時に批判の矛先は、安全と引き換えに、自由や権利を放棄した国民にも向け
られています。政府転覆を狙うＶの最終的な作戦は、そうした民衆を蜂起させ
ることでした。
テロリスであるＶは、バッサバッサと人を殺し、爆弾を炸裂させます。「いく
ら相手が悪人でも人殺しはいけないよ〜」などという甘っちょろいヒューマニ
ズムが入る余地はありません。考えようによっては「テロリスト礼賛」と受け
取られかねないこんな映画をつくるなんて、いい根性してるよなぁ〜。
もちろんＶのアクションや大爆発シーンなど、ハデなシーンもいくつかありま
す。しかし、全体はダークで重苦しい雰囲気に包まれています。スカッとなれ
るヒーローものとは、対極のテイストを持つ映画です。
ラストの大爆破と押し寄せる群集のシーンは、まさに圧巻。この映画がただの
サスペンス・アクションではなく、骨太の社会派映画であることをハッキリと
物語っています。
スキンヘッドで熱演したナタリー・ポートマン。仮面をつけたままのヒュー
ゴ・ウィービング（『マトリックス』のエージェント・スミス）。そして、ス
ティーヴン・レイ、ジョン・ハートといった渋い脇役の演技も印象的。
ついでにＶの好きなジャズや大爆破シーンでの交響曲など、音楽の使い方もな
かなかのもの。
難点といえば、いろんな話が詰め込まれて、ややわかりにくいところでしょう
か。それにＶとイヴィーのロマンスも中途半端な感じ。登場人物の人間的な魅
力を味わう映画ではありません。
この映画を9．11以前に観ても、イマイチ、リアリティーはなかったかもしれま
せん。しかし、最近の世界情勢を見ればとても絵空事とは思えません。日本だ
って、テロ対策を名目に「共謀罪」なるものが成立しかけていて、いずれそう
いうことがファシズム国家につながらないとは断言できないのですから。「そ
うなってから騒いでも遅いんだぜ！」という作り手の声が聞こえてくるヤバイ
映画です。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（ただのアクションと思って観たらダメ。爽快感はないものの、今の時代を反
映した見応えある社会派アクションです。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2006年４月30日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時15分の回
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