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わたし出すわ
（2009年 日本）（上映時間1時間50分）
監督・脚本：森田芳光
出演：小雪、黒谷友香、井坂俊哉、山中崇、小澤征悦、小池栄子、仲村トオル、
小山田サユリ、ピエール瀧、北川景子、永島敏行、袴田吉彦、加藤治子、藤田
弓子、天光眞弓
＊恵比寿ガーデンシネマ、新宿バルト9、銀座テアトルシネマほかにて全国公開
中
ホームページ http://watashi-dasuwa.com/
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＜ストーリー＞
東京から故郷の北海道に戻ってきた山吹摩耶（小雪）は、高校時代の友人たち
と再会し、彼らの夢をかなえさせるために大金を差し出す。金を受け取ったの
は、路面電車の運転手、足を故障した陸上選手、金融業者と結婚した主婦、養
魚試験場の研究員、玉の輿に乗った女性。お金を受け取ったことで、彼らの人
生は変化していくのだが……。
＜レビュー＞
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お金っていったい何なのさ。森田芳光が大胆に描く問題作
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ベテラン森田芳光監督の新作映画。といってもオリジナル脚本は『（ハル）』
以来13年ぶりです。そのせいか、ここ最近の『間宮兄弟』『サウスバウンド』
『椿三十郎』といった作品とはかなりタッチの違う映画です。
オープニングに登場するのはお金に関する格言。そうです。この映画はズバリ、
お金をテーマにした映画です。お金があれば幸せになれるのか。お金は人間を
どう変えるのか。お金っていったい何なのさ。そんなテーマに迫っています。
東京から北海道に帰ってきた摩耶という女性。高校の同級生5人と再会し、彼ら
の夢をかなえてあげるために、大金を提供します。
お金をもらうのは、路面電車の運転手、足を故障した陸上選手、金融業者と結
婚した主婦、養魚試験場の研究員、一度は玉の輿に乗った女性。彼らがお金を
手にしたことによって、どんなふうに変わっていくのかが描かれます。
路面電車の運転手は、以前からの夢である世界の路面電車めぐりを計画します
が、大金に目がくらんだ彼の妻はおかしな方向へ。一方、足を故障した陸上選
手は再起をめざして手術を受けます。金融業者と結婚した主婦は夫のささやか
な願いをかなえてあげます……。というように、彼らのその後の運命は様々で
す。お金はそれを手にした人によって、価値が大きく変わってしまうことを実
感させられます。
この映画は、けっしてわかりやすい映画ではありません。主人公がどうしてそ
んな大金を手にしたのか、ヒントらしきものは提示されますが、明確な事情が
描かれるわけではありません。また、彼女がどうしてお金を配るのかもはっき
り示されません。高校時代の友人たちとの思い出の場所と、当事彼らが語った
言葉がテロップで挿入されるものの、それ以上のことは描かれません。
そして、ところどころに登場するのは、摩耶と寝たきりの母親とのシーン。摩
耶が口のきけない母親としりとりをします。しかし、母親がなぜそうなったの
か、摩耶と母親の関係はどうなのかも、詳しくは描かれません。
おそらく、こうしたタッチに違和感を持つ観客も多いでしょう。しかし、個人
的にはこういう映画も嫌いではありません。すべてを明確にしない分だけ、観
客に多くのことを考えさせる映画。観客の想像力を刺激する映画。ノーテンキ
な娯楽映画にはない魅力がそこにはあります。
一時の森田監督の映画は、演出が過剰でついていけないところもあったのです
が、この映画にはそういう感じはありません。ややセリフが過剰ではあるもの
の、全体のタッチは淡々と抑制的です。あまりにも淡々としすぎて、盛り上が
りに欠けるのは事実ですが……。
そして、ラストのエピソードで森田監督の意図は明確になります。小池栄子扮
する主婦が、世間を騒がせたある騒動に関わっていたことが明かされ、摩耶の
母親に大きな変化が起きます。そこに至って、お金よりも大切なものが世の中
にあることが強烈に印象付けられます。
主演の小雪はこういうミステリアスな役がピッタリ。『カムイ外伝』の抜け忍
といい、今回といい、まさにはまり役でした。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆
《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆（＋1／2★）
（わかりやすい映画ではないので、誰にでもオススメとはいきませんが、こう
いう時代だけに一見の価値はあると思います。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2009年8月23日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後12時の回
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