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闇の子供たち
（2008年 日本）（上映時間2時間18分）
監督・脚本：阪本順治
出演：江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、プライマー・ラッチャタ、プラパド
ン・スワンバン、塩見三省、鈴木砂羽、豊原功補、佐藤浩市
＊シネマライズほかにて公開
ホームページ http://www.yami-kodomo.jp/
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＜ストーリー＞
日本新聞社バンコク支社の記者・南部浩行（江口洋介）は、タイで行われてい
る闇ルートの臓器移植の取材を開始する。同じ頃、東京の大学で社会福祉を学
んだ音羽恵子（宮崎あおい）は、タイの社会福祉センターで子供たちのための
ボランティア活動を始める。南部は、音羽らの協力を得て事実に迫っていくの
だが……。
＜レビュー＞
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タイの人身売買の実態を描いた衝撃の社会派ドラマ
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『どついたるねん』『顔』『ＫＴ』『亡国のイージス』『魂萌え！』など、い
ろいろなタイプの映画を監督している阪本順治監督。今回は骨太な社会派映画。
重たいテーマを真正面から受け止めて、観客に鋭い問題を突きつけています。
描かれるのはタイにおける人身売買の実態。貧困にあえぐ親によって売り飛ば
された子供たちが、牢獄のようなところに閉じ込められ売春をさせられます。
病気になればビニール袋に詰められゴミとして捨てられます。しかも、そこに
は日本人をはじめ外国人が深く関わっているのです。
タイの子供たちが置かれた目を覆いたくなる惨状を、阪本監督は容赦なく描き
だします。もちろんドキュメンタリーではなく役者が演じているのですが、あ
まりにもリアルで過酷な描写には、胸がギリギリと締め付けられてしまいまし
た。まさに衝撃的なシーンの連続です。しかも、ただ悲劇を見せるだけでなく、
観客に加害者としての立場をハッキリと意識させるのです。
全体の構成はあくまでもサスペンスドラマとして組み立てられています。江口
洋介演じる臓器密売の実態に迫る新聞記者、宮崎あおい演じるＮＧＯ職員らに
よるスリリングなドラマが展開します。
それもけっして単純なドラマではありません。様々な登場人物がそれぞれにド
ラマを抱えて、真っ向からぶつかり合います。たとえば、どちらも人身売買に
反対する新聞記者とＮＧＯ職員ですが、立場の違いによって両者は対立し、ケ
ンカ別れしてしまいます。それによって、観客は事態の深刻さと、解決の難し
さを思い知らされます。
また、非合法な臓器移植を受ける子の両親は、けっして臓器売買を肯定してい
るわけではなく、我が子の命を救いたい一心で移植を希望します。そのギリギ
リの思いの前では、単純な正義感など吹き飛ばされてしまいそうです。そして、
そうした恐ろしい現実を裏から操るタイの闇組織の恐怖……。
いたずらに悲劇を煽るのでなく、お説教をするのでもなく、サスペンスドラマ
として描いたことで、社会的なテーマがより身近で、切実な問題として観客の
胸に飛び込んで来ます。
梁石日の同名小説の映画化ということもあってか、都合の良い部分やツッコミ
が浅い部分も見られます。しかし、それを上回る圧倒的な見応えがあります。
ラストはある種の勧善懲悪を見せて観客に希望の灯を示すものの、その直後に
信じられない驚愕の事実を描きます。「あなたたちは第三者ではなく、加害者
なのだ。単純な同情や慈悲では何も解決しないのだ」。そんな痛烈なメッセー
ジが聞こえてきそうです。
しかし、同時に直後のエンディングでは、川で遊ぶ無邪気な子供たちの姿を映
し出します。「あの子たちのために、どんなに困難でも絶望せずに一歩ずつ問
題を解決していかなければいけない」。そんな気持ちにさせられるポジティブ
なエンディングです。
ただし、そこで流れる桑田佳祐の『現代東京奇譚』は、はっきり言って似合っ
てねぇ〜。なぜに、この曲？ と思ったら製作者にサザンの所属事務アミュー
ズの元会長・大里洋吉の名前が……。なるほど、それで桑田ですか！？
この曲を除けば、実に見応えのある映画です。けっして楽しい映画ではありま
せん。目を覆いたくなるようなシーンがたくさんあります。しかし、それでも
しっかりとスクリーンを直視して、受け止めなければならない映画だと思いま
す。目をそらさずに観よ！！！
《ぽちの満足度》
★★★★☆
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（人身売買という重たいテーマを、厚みのあるサスペンスドラマで描いた見事
な映画。息苦しさをこらえて、ここに描かれたことを直視してください。）
（ぽち）
〔鑑賞データ〕
2008年8月4日（月）シネマライズにて。午後12時55分の回
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