|
イエスタデイズ
（2008年 日本）（上映時間1時間59分）
監督：窪田崇
出演：塚本高史、國村隼、和田聰宏、原田夏希、カンニング竹山、高橋惠子、
風吹ジュン、蟹江一平、中別府葵
＊シネマート新宿ほかにて公開
ホームページ http://www.yesterdays-movie.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
聡史（塚本高史）は、父・昭彦（國村隼）から余命わずかだと知らされ病院を
訪れ、「30年前につきあっていた女性を探してほしい」と依頼される。仕事一
筋の父に反発し続けていた聡史だが、渋々この頼みを受け入れる。昔、昭彦が
描いたスケッチブックにあったアパートを訪ねてみると、不思議なことに、そ
こには若き日の昭彦（和田聰宏）と恋人・澪（原田夏希）がいた……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ファンタジータッチで描いた父と息子のドラマ。しみじみとした感動が……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
父に反発していた息子が、今まで知らなかった父の顔を発見して、親子の関係
に変化が訪れる……。というのは、よくあるお話。しかし、そのよくある話を
味わい深い物語に仕上げているのがこの映画。
レストランチェーンで成功した父の昭彦に反発して家を飛び出した息子の聡史。
父が余命いくばくもないと知り、「昔の恋人を探してほしい」という願いを
渋々受け入れます。昔、画家志望だった昭彦が描いたスケッチブックを頼りに
捜索を始めた彼は、やがて若き日の父と恋人に出会うのでした……。
虚構の世界を織り交ぜたファンタジータッチの映画。ときどき昔の父と恋人が
出現して主人公と交流します。彼らが現代に出現するというよりは、主人公が
当時にタイムスリップする感じです。
こういう展開は、あまり仰々しく描くとウソくさくなってしまいますが、この
映画はさりげない感じで、不自然さがありません。おかげで、素直にスクリー
ンに入っていけました。現実のような、夢の中のような、微妙な雰囲気が魅力
的。スクリーンの上を独特の情感が漂います。
登場人物の心理の切り取り方も巧みです。セリフがゴテゴテしていないし、間
をうまく使っています。
当初は父に反発していた主人公ですが、かつての父と恋人と友達のようにふれ
あううちに、少しずつ心が変化していきます。
しかし、やがて若き日の父と恋人に大きな転機が訪れます。それとともに開き
かけていた主人公の心は再び閉じてしまいます。ところが、その裏にはある事
実が隠されていました。そこにあるのは、けっして驚くような事実ではありま
せん。ほんのちょっとした誤解です。それを知った主人公はどうしたのか……。
まあ、詳しい展開は伏せますが、ラストはシミジミと感動させてくれます。涙
ウルウルというのではなく、さわやかで、温かな感動です。
配役も絶妙。國村隼の含蓄のある演技と塚本高史の若者らしい演技が、微妙な
親子関係をうまく表現。高橋惠子と風吹ジュンも味のある演技です。
そして、かつての恋人を演じた原田夏希の不思議な存在感。まさに幻想の中の
女神という感じですね。2004年のＮＨＫの連続テレビ小説「わかば」で主役を
演じていたそうです。
ごくありふれた話だし、けっして驚くようなところはありませんが、役者たち
の好演と情感を生かした演出でステキな映画になっています。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆
（ジミめな小品ですが味わいのある映画。温かな感動を味わいたい方にはオス
スメ。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2008年11月13日（木）シネマート新宿にて。午後4時20分の回
[「い」のページ] |
|