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酔いがさめたら、うちに帰ろう。
（2010年 日本）（上映時間1時間58分）
監督・脚本・編集：東陽一
出演：浅野忠信、永作博美、市川実日子、利重剛、藤岡洋介、森くれあ、高田
聖子、柊瑠美、甲本雅裕、渡辺真起子、堀部圭亮、西尾まり、大久保鷹、滝藤
賢一、志賀廣太郎、北見敏之、螢雪次朗、光石研、香山美子
＊シネスイッチ銀座、テアトル新宿ほかにて全国公開中
ホームページ http://yoisame.jp/
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＜ストーリー＞
戦場カメラマンの塚原安行（浅野忠信）は、重度のアルコール依存症で喀血し
病院に運ばれる。今は離婚して2人の子どもとともに離れて暮らす元妻で人気漫
画家の園田由紀（永作博美）は、別れても安行のことが心配で仕方がない。ア
ルコール病棟に入院した安行は、そんな家族の愛情に支えられ、風変わりな患
者や医者たちと過ごすうちに、少しずつ回復していくのだが……。
＜レビュー＞
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淡々とした描写の向こうに見える様々な感情の機微
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人気漫画家の西原理恵子の元夫で、2007年に死去した戦場カメラマン・鴨志田
穣の自伝的小説の映画化。重度のアルコール依存症から体を壊し、死んでいっ
た主人公と周辺の人たちを悲劇的に描くのではなく、淡々と静かに描くことで、
しみじみとした感動につなげています。
冒頭は、10度目の吐血をした主人公が救急車で病院に運ばれるシーン。そこに
駆けつけた元妻は「大丈夫。まだ死なないよ」とひと言。そんな元妻と2人の子
どもたちとの交流を中心に、主人公の闘病の日々をほぼ時系列に沿って描いて
いきます。
主人公と元妻との距離感が絶妙です。お互いに強く感情をぶつけ合うシーンは
ほとんどありませんが、さりげないセリフやしぐさの向こう側に、これまでの
様々な感情が見え隠れします。
やがて主人公は、アルコール依存症の治療のために精神病院に入院します。そ
こでのユニークな患者たちの姿や患者同士のいざこざ、個性的な医師や看護師
たちの姿をユーモアを交えながら描いていきます。特に主人公の食事への執着
をネタにしたシーンが笑えます。
こうした日常生活を通して、主人公の人物像、アルコール依存症に至った過程、
元妻との関係などを浮き上がらせていきます。
タッチはあくまでも抑制的。主人公の幻覚などは描くものの、アルコール依存
症の恐怖を直接的に表現することはありません。かつて主人公が元妻に対して
繰り広げた修羅場の回想も、たった1度登場するのみ。それでも、アルコール依
存症という病気の根深さは十分に伝わってきます。
家族に支えられながら、少しずつ回復しているかに見えた主人公ですが、まも
なく衝撃の宣告を受けます。しかし、その場面もあえてカットして、直後の川
原で元妻と足を絡ませるシーンで、2人の結びつきの強さと深い悲しみを静かに
表現します。
その後は、主人公が患者たちの前で自身の身の上を話すシーン、家に戻ってか
らの元妻の涙など、ジンワリと胸を熱くするシーンが続きます。
そして、ラストシーンは海辺での家族のシーン。ここではファンタジックなあ
る仕掛けが用意されています。詩情に満ちた美しいシーンで余韻が残ります。
監督は名作『サード』などの東陽一監督。仰々しい演出で涙を押し付けるので
はなく、淡々とした描写によってしみじみとした感動を味わわせてくれる、ベ
テランらしい演出です。
俳優陣で光るのが永作博美。こういう役は彼女しかできないでしょう。市川実
日子、利重剛、高田聖子、柊瑠美、香山美子など、脇役も存在感タップリ、2人
の子役もカワイイです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（ドラマチックさをあえて排除した淡々とした描写が、しみじみとした感動を
呼ぶ佳作。地味ですが、胸にしみます。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2010年12月4日（土）シネスイッチ銀座にて。午後1時50分の回
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