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行きずりの街
（2010年 日本）（上映時間2時間3分）
監督：阪本順治
出演：仲村トオル、小西真奈美、南沢奈央、菅田俊、うじきつよし、大林丈史、
でんでん、宮下順子、佐藤江梨子、谷村美月、杉本哲太、ARATA、窪塚洋介、石
橋蓮司、江波杏子
＊丸の内ＴＯＥＩほかにて公開
ホームページ http://www.yukizuri.jp/
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＜ストーリー＞
郷里の丹波篠山で塾講師をしている波多野（仲村トオル）は、失踪（しっそ
う）した元教え子ゆかり（南沢奈央）を追って東京に向かう。心当たりを捜し
まわる波多野は、やがてあるバーへたどり着く。そこには、別れたかつての妻、
雅子（小西真奈美）がいた。波多野は、かつて東京の私立高校の教師だったが、
教え子である雅子との恋愛・結婚により学校を追われ、その後、彼女と離婚し
たのだった……。
＜レビュー＞
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ミステリーよりも大人の愛の物語が胸にしみる映画
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1992年度の「このミステリーがすごい！」で第1位に輝いた志水辰夫の同名小説
の映画化（なぜに今頃？）。
失踪した元教え子の行方を捜すために、郷里から12年ぶりに東京にやってきた
塾講師。捜索を開始すると、どうやら彼女には年上の男の影が……。
というわけで、主人公が元教え子の行方を探るうちに、その背後にある大きな
陰謀に巻き込まれていくというミステリーです。
阪本順治監督は、『亡国のイージス』『闇の子供たち』『座頭市 THE LAST』を
はじめ、あらゆるタイプの映画を監督していますが、どんな映画でも人間ドラ
マをきちんと描くのが特徴。今回も人間ドラマを中心に据えています。
実は主人公の波多野は、かつて東京の高校で教師をしていた時に、教え子の雅
子と親しくなり彼女の卒業後に結婚。ところが、それが不謹慎だとされて学校
を追われ、その後2人は離婚したのでした。そして、今はクラブのママとなった
雅子と再会。この2人による大人の愛のドラマがこの映画の魅力です。
過去の傷を抱えながら、お互いに相手のことが忘れられない2人。揺れ動く心情
があまりにもリアルに描かれます。突然の再会に戸惑い、内心喜びながらも表
面は平静を装い、ちょっとしたことで過去の傷がうずいてぶつかり合う。そん
な大人の愛が心を直撃。観ているうちに、まるで自分が波多野のような気分に
なってしまうから不思議なもの。
アップやストップモーションなどを効果的に使った映像も効果的。撮影は松田
優作の映画などでおなじみの仙元誠三。脚本も同じく松田優作の作品を手がけ
た丸山昇一。
2人の愛の最大の見せ場が、濃厚なラブシーンです。別れてからの12年間の思い
が一気に爆発したようなラブシーンで、露出度は高くないのに超エロチック。
まさしく大人の愛にゾクゾクさせられました。
ラストは、大人の愛の物語にふさわしい、抑制的ながらあと味の良い結末にホ
ッとさせられました。
雅子を演じた小西真奈美が絶品。かつてのほのぼのとして癒し系の側面だけで
なく、激しさや妖しさも兼ね備えた大人の女優に成長。ハードボイルドを地で
行く演技の仲村トオルとのコンビも絶妙です。
その一方で、ミステリーの魅力はイマイチ。魅力的な悪役を配し、主人公を危
機にさらしたりはするものの、それほどハラハラドキドキはしません。事件の
構図が比較的シンプルなこともあって、「このミス〜」１位の原作の面白さは、
残念ながら伝わってきませんでした。
ミステリーとしての魅力には欠けるものの、大人の愛の物語としては一級品の
映画。2人の思いが胸にしみます。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（ミステリーというよりも、大人の愛の物語として観るのが正解。そういう点
で観応えが十分にありました。）
（田中ひろあき（ぽち））
鑑賞データ〕
2010年11月20日（土）シネマサンシャイン池袋にて。午後4時30分の回
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