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絶対の愛（TIME）
（2006年 韓国・日本）（上映時間１時間38分）
監督・脚本：キム・ギドク
出演：ソン・ヒョナ、ハ・ジョンウ、パク・チヨン、杉野希妃（ソ・ヨンフ
ァ）
＊ ユーロスペースにて公開。全国順次公開
ホームページ http://zettai-love.com/
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＜ストーリー＞
恋人同士のセヒ（パク・チヨン）とジウ（ハ・ジョンウ）。つきあい始めて２
年が過ぎ、セヒはジウが自分に飽きたのではないかと疑い出す。そんなある日、
セヒは突然姿を消す。行方を捜すジウの前に、やがてセヒとよく似た名前の女
性スェヒ（ソン・ヒョナ）が現れる。実は、彼女は整形手術を施したセヒ本人
だったのだ。それを知らないジウは、次第にスェヒに惹かれていくのだが……。
＜レビュー＞
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キム・ギドクによる深いテーマを持つ痛〜い愛の物語
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キム・ギドク監督は国際的に評価の高い韓国の鬼才ですが、エンタメ映画全盛
の韓国ではあまり状況は良くないらしく、「もう韓国で映画は公開しない！」
てな発言をして、物議を醸したりしました。
まあ、確かに『魚と寝る女』だとか『悪い男』だとか、人間の心の奥底にある
ドロドロしたものを、「これでもか！！」と暴き出す作風は万人受けは難しい
ところ。
とはいえ、2003年の『春夏秋冬そして春』あたりからは、だいぶ作品に幅が出
てきて、以前のような難解さや後味の悪さはあまり感じられなくなっています。
だいたい、好きな映画が撮れて、ちゃんと生活もできるんだから文句なんか言
っちゃダメ。てのは凡人のヒガミかしら？
今回の映画はいきなり整形手術のシーンから始まります。そうです。整形が一
般化しているといわれる韓国。それを背景にした映画なのです。
ジウという恋人がいるセヒという女。しかし、異様なほどに嫉妬深くジウを困
らせる。どうやら、彼女はジウが自分に飽き始めていると危惧しているらしい。
そして、彼女は突然姿を消す。なんと整形をして顔を変え別人になってしまっ
たのだ。別人としてジウの前に現れて親密な関係になり、思い通りに事が進ん
だように思えたのだが……。
というわけで、テーマは愛。「永遠の愛なんてあるのか？？？」というキツい
問いが投げかけられています。それを通して「TIME」という原題からもわかる
ように、時間の移ろいの残酷さを浮かび上がらせています。さらに、「人間に
とって"顔"とはいったい何なのか？」ということも観客は考えさせられてしま
うはず。整形に対する監督のシニカルな見方が感じられます。
しかし、難解なところはまったくありません。むしろわかりやすいドラマです。
ユーモラスで笑えるシーンもあります。
映像の鮮烈さは健在で、マスクで顔を隠す女とか、彫刻公園の風変わりなオブ
ジェとか、印象的な映像がたくさん登場します。
後半の展開はユニークで壮絶なもの。「そこまでやるか？」という感じ。ひょ
っとしたら、こういう展開はキム・ギドク流のエンターティメントなのかもし
れません。けっこう観客を意識したつくりのようにも思えます。もちろんハリ
ウッド映画のようなエンタメ性はありませんが……。
いくら愛のためとはいえ、整形までしてしまう女の情念は、正直コワイですよ。
「女性にあのぐらい惚れられた男は幸せ」なんて、お気楽なことを言わせない
コワサがあります。ラスト近くで必死で男を探す女の思いも、実に哀しく切な
い。とにかく痛すぎる愛です。彼女を失った男の混乱や失意もきちんと描かれ、
この風変わりな愛の物語をより起伏に満ちたものにしています。
最後に待っているのは思ってもみなかったオチ。あのあと彼女はどうなるので
しょう？ 最後もまた痛くて哀しいエンディングです。
けっこう深くて重たいテーマを持つ映画ですが、あんまり難しいことを考えず
に観ても楽しめそうです。痛くて、風変わりな愛の物語が最後まで心を捉えて
離しません。まあ、主人公があまりに極端なキャラクターに見えて、中には引
いちゃう人もいるかもしれませんが……。
ちなみに、主演のソン・ヒョナはミス・コリア出身で、２年前に整形をカミン
グアウトして話題を集めたそうです。それ以外にもたくさんの美女が登場しま
すが、みんな整形に見えてしまうのが困ったもの（笑）。
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（風変わりなラブ・ストーリー。とにかく痛い！ キム・ギドクの映画を観た
ことがない人でも、愛について関心のある方はぜひどうぞ。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年3月21日（水・祝）ユーロスペースにて。午後2時30分の回
[「せ」のページ] |
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