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ゾディアック（ZODIAC）
（2006年 アメリカ）（上映時間２時間37分）
監督：デヴィッド・フィンチャー
出演：ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Ｊ
ｒ、アンソニー・エドワーズ、ブライアン・コックス、イライアス・コティー
ズ、クロエ・セヴィニー
＊丸の内プラゼールほかにて全国公開
ホームページ http://wwws.warnerbros.co.jp/zodiac/
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＜ストーリー＞
1969年7月4日、カリフォルニアでドライブ中の男女が銃撃され女性が死ぬ。事
件の通報者は"犯人は俺だ"と言い残す。それから約１ヶ月後、サンフランシス
コ・クロニクル紙に、２件の殺害を告白する声明文が届く。そこには謎の暗号
文も添えられていた。同紙の記者エイブリー（ロバート・ダウニー・Ｊｒ）と
風刺漫画家グレイスミス（ジェイク・ギレンホール）は、事件の真相究明に没
頭する。一方、サンフランシスコ市警の刑事トースキー（マーク・ラファロ）
とアームストロング（アンソニー・エドワーズ）も犯人を追いかけるが……。
＜レビュー＞
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未解決事件のモヤモヤ感を上回る男たちの人間ドラマが魅力
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1960年代後半から70年代にかけて全米を震撼させた、「ゾディアック」と名乗
る犯人による連続殺人事件を描いた犯罪サスペンス。
この事件の特異なところは、残忍な殺害方法に加え、ナゾの暗号を使った脅迫
状、新聞やテレビなどのマスコミを利用した現代的な手法。いわば劇場型犯罪
の典型のような事件。
その犯行の一部始終とともに、それを追う新聞記者、新聞社の漫画家、刑事た
ちの姿が描かれます。全編に漂う緊迫感が生半可ではなく、ディテールへのこ
だわりも相当なもの。テンポも快調で、常識を超えた犯人が何を起こすのか、
予測不可能でスリリングな展開が続きます。
連続殺人とはいうものの、犯行は中盤あたりでほぼ終息し、犯人は動きを止め
てしまいます。そこからは、事件を追う男たちによる謎解きのおもしろさが前
面に出てきます。
次々に浮上する決定的と思える証拠と有力な容疑者。しかし、どれも決め手に
はならないことがわかります。事件の真相をつかめると胸を躍らせ、そして落
胆する男たちの悲哀や焦燥感が、観客にもリアルに伝わってきます。
しかし、実はこの事件は現在でも未解決。したがって、この映画でも、けっし
て真相は明らかになりません。劇中でこの事件をヒントにした『ダーティ・ハ
リー』が登場し、実際の事件は映画のようにスッキリといかないことが印象づ
けられます。観終わってモヤモヤが残ってしまうのが、この映画の最大の欠点
でしょう。
にもかかわらず、最後までスクリーンに引き付けられてしまいました。それと
いうのも、後半で、事件を追い、事件に翻弄される男たちの人間ドラマが描か
れるからです。新聞記者エイブリーはアルコールと薬漬けになり、刑事トース
キーは警察内部から疑惑の目を向けられ、漫画家グレイスミスは家庭不和に苦
しむなど、いずれも事件にどんどんのめり込み、人生を狂わせてしまうのです。
彼らのドラマがこの映画に厚みを加え、真相が闇に包まれたままのモヤモヤ感
を上回る大きな魅力となっています。
漫画家グレイスミスを演じるのは『ブロークバック・マウンテン』のジェイ
ク・ギレンホール。純朴そうなところが、いかにも事件にのめり込みそうでピ
ッタリの役柄。
新聞記者エイブリー役のロバート・ダウニー・Ｊｒも、アルコールや薬でボロ
ボロになったところがサマになっています。実生活でも薬漬けになった経験が
あるから、サマになるのも当然か（笑）。
２人の刑事を演じるマーク・ラファロとアンソニー・エドワーズも、存在感の
ある演技。アンソニー・エドワーズといえば、ＴＶドラマ『ＥＲ』のグリーン
先生でおなじみですが、今回はなぜか髪の毛フサフサ……。
デヴィッド・フィンチャー監督は、『セブン』や『ファイト・クラブ』などの
スリリングで、ダークなタッチの映画には定評があります。今回は結末がスッ
キリしないことを逆手にとって、人間ドラマの魅力を加えることで、過去の作
品とはちょっと違った映画に仕上げています。
サスペンスとしてのおもしろさに加え、ある事件をきっかけに破滅へと向かう
男たちの人間ドラマとしての魅力が光る映画です。
《ぽちの満足度》
★★★☆☆（＋1／2★）
《ぽちのオススメ度》
★★★☆☆（＋1／2★）
（スリリングなサスペンスに人間ドラマも加わった映画。過去のフィンチャー
作品とは一線を画しますが、厚みのある映画で見応えは十分。）
＜ぽち＞
〔鑑賞データ〕
2007年6月16日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時15分の回。
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