|
127時間（127 Hours）
（2010年 アメリカ・イギリス）（上映時間1時間34分）
監督：ダニー・ボイル
出演：ジェームズ・フランコ、アンバー・タンブリン、ケイト・マーラ、リ
ジー・キャプラン、クレマンス・ポエジー、ケイト・バートン
＊TOHOシネマズシャンテ、シネクイントほかにて全国公開
ホームページ http://127movie.gaga.ne.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
≪ストーリー≫
27歳の青年アーロン（ジェームズ・フランコ）は、１人で険しい谷へロックク
ライミングに出かける。だが、ふとしたことから誰も寄り付かない場所で転落
し、大きな落石に右腕を挟まれて、谷底で身動きがとれなくなってしまう。そ
こから抜け出す方法を必死で探すアーロンだが、時間はどんどん過ぎていき、
体力と精神力は限界を迎えてしまう……。
≪レビュー≫
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
死の瀬戸際に追い込まれた青年の生への渇望を描く
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
青年登山家アーロン・ラルストンが体験した実話を、『スラムドッグ＄ミリオ
ネア』のダニー・ボイル監督が映画化。峡谷で岩に腕を挟まれて、身動きでき
なくなった青年の脱出に向けた127時間の苦闘を描いた作品。
冒頭からしばらくは、ミュージックビデオのようなポップな映像で、主人公の
青年アーロンが１人で峡谷に出かけ、そこで軽快に荒野を駆け巡る姿が描かれ
ます。続いて、彼が道に迷った２人の女性を案内し、一緒に岩の下にある湖の
ような場所にダイブして楽しむようすが描かれます。ここまでの場面が、それ
以降の展開との鮮やかなコントラストを形成しています。
２人の女性と別れた直後、アーロンは岩場の裂け目のようなところに転落し、
大きな石に右腕を挟まれ、身動きが取れなくなってしまいます。そこからラス
ト近くまでは、ずっと同じ構図が続きます。身動きの取れないアーロンによる
一人芝居。しかし、まったく飽きることはありません。
さすがに転落した当初は混乱するアーロンですが、すぐに何とかして脱出しよ
うとあれこれ手を尽くします。しかし、思うようにはならず、挟まれた腕は悪
化していきます。体力はどんどん低下し、水も底をついてきます。
そんな主人公の姿を凝りに凝った映像で映していきます。特にアーロンがビデ
オカメラに自分の状況を記録する仕掛けが効果的。それを通して、彼の心象風
景をリアルに見せていきます。
そこに加わるのがアーロンの回想映像。幼少時や恋人との思い出が、彼の心に
様々な思いを去来させます。さらに、彼の空想、あるいは妄想もポップでキレ
のある映像によって描かれます。冒頭に登場した女性たちに誘われたパーテ
ィーに出席したり、襲ってきたスコールのおかげで脱出に成功したり。体は動
けないものの、空想は自由に飛翔します。
過酷な状況下にもかかわらず、テレビショーもどきのユーモラスなアーロンの
独白なども織り込まれ、彼のポジティブな姿勢を示すと同時に、ドラマにメリ
ハリをつけています。
終盤、ついに追い詰められて「自分が悪いんだ」「すべてはこの状況につなが
っていたんだ」と絶望に苛まれるアーロン。しかし、そこから生への強い渇望
へと一気に転化していきます。その力強い持って行き方が印象的。
そして決断するアーロン。そこからはあまりにも壮絶なシーンで痛々しいけれ
ど、映像の力で目を背けさせません。そして、そのままラストへと畳み掛けて
いきます。
最後に残るのは、人間の生命力の強さ、たくましさ。それをつくづく実感させ
られる、押し付けがましさのない生命賛歌ともいうべき映画です。
おっと、ほぼ１人で演じ切ったジェームズ・フランコの熱演も忘れてはいけま
せんね。まさに一世一代の演技かも……。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年6月18日（土）新宿武蔵野館にて。午後2時20分の回
[「ひ」のページ] [「数字」のページ] |
|