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愛の勝利を ムッソリーニを愛した女（VINCERE）
（2009年 イタリア）（上映時間2時間8分）
監督・脚本：マルコ・ベロッキオ
出演：ジョヴァンナ・メッゾジョルノ、フィリッポ・ティーミ、ミケーラ・チ
ェスコン、ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ、ファウスト・ルッソ・アレシ、
コッラード・インヴェルニッツィ
＊シネマート新宿ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://www.ainoshouri.com/
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＜ストーリー＞
1910年代前半のイタリア。イーダ（ジョヴァンナ・メッゾジョルノ）は、社会
党の党員だったムッソリーニ（フィリッポ・ティーミ）と出会い、恋に落ちる。
やがてムッソリーニは党を除名になり窮地に陥るが、イーダは彼を愛し続け私
財を投げ打って支える。イーダはムッソリーニの子供を出産し認知を受けるが、
正妻がいたムッソリーニは権力を握るとスキャンダルを恐れて、イーダとその
息子を遠ざけるようになる……。
＜レビュー＞
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ムッソリーニの愛人のあまりにも壮絶な抵抗のドラマ
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『肉体の悪魔』『夜よ、こんにちは』で知られるイタリアの巨匠マルコ・ベロ
ッキオ監督が、独裁者ムッソリーニの愛人イーダを描いた伝記ドラマです。同
じく独裁者のヒットラーの愛人エヴァ・ブラウンは有名ですが、イーダは歴史
から消された存在だったとか。
社会主義者だった若きムッソリーニと恋に落ちたイーダ。彼が党を除名されて
も献身的に支え続け、やがて子供も誕生。しかし、正妻がいたムッソリーニは、
出世するうちにイーダが邪魔になり、その息子とともに闇に葬ろうとします。
前半はまだ愛し合う２人が描かれます。それでも、ムッソリーニの視線が必ず
しも彼女に向けられていたわけではないことが、映像の端々に刻まれます。
そして、後半は壮絶なドラマ。イーダと息子が邪魔になったムッソリーニは、
彼らを監視するだけでは飽き足らずに、イーダを精神病院に閉じ込め、息子も
なかば監禁状態に置きます。
それに対して徹底抗戦して、あらゆる手立てで復権しようとするイーダ。「あ
の人は私があそこまでにした！」「彼にふさわしい女は私しかいない！」「い
ずれ私が正妻になる！」などと話すイーダに対して、最初のうち違和感を持っ
たのは事実。「もっと前向きに生きろよ！」と思ってしまいました。
しかし、その抵抗が自分の人生を否定されたくない思いからだと解釈すれば、
納得できる気もしてきます。引き離された息子への思いも加わるだけに、なお
さらです。
精神病院の鉄柵をよじのぼって息子への手紙をばらまいたり、ついには脱走ま
で図ったり……。その抵抗ぶりがあまりにも凄まじくて、ただ圧倒されてしま
いました。つくづくスゴイ女性です。
また、彼女の姿を通して、抑圧下の人間の生き方についても考えさせられまし
た。良心的な精神科医は、「いずれファシズムは衰退する。今は演技しなさ
い」とアドバイスします。それでもイーダは愚直に、自分がムッソリーニの愛
人であることを主張し続けます。真実を偽って生き延びるべきか、それともた
とえ破滅しても自分に正直に生きるのか、究極の選択です。
基本は正攻法で重厚なベロッキオ監督の演出。ただし、そこには様々工夫が盛
り込まれています。セピアっぽい色調の映像で独特の世界を作ったり、ニュー
スフィルムやチャップリンの映画を登場させたり……。それらを通して、イー
ダの波乱の人生とその背景となった社会状況を的確に描き出しています。
それより何より、この映画の最大の見所は、イーダを演じたジョヴァンナ・メ
ッゾジョルノの迫力に満ちた演技でしょう。数々の賞に輝いたのが納得の見事
な存在感です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年5月30日（月）シネマート新宿にて。午後4時15分の回
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