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アジョシ（THE MAN FROM NOWHERE）
（2010年 韓国）（上映時間1時間59分）
監督・脚本：イ・ジョンボム
出演：ウォンビン、キム・セロン、キム・ヒウォン、キム・ソンオ、キム・テフン、ソン・ヨンチャン、タナヨン・ウォンタラクン
＊丸の内TOEI、新宿バルト９ほかにて全国公開
ホームページ http://www.ajussi2011.jp/
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＜ストーリー＞
過去のある事件をきっかけに、街の片隅で質屋を営み、世間を避けるように生きる孤独な男テシク（ウォンビン）。一方、隣家の少女ソミ（キム・セロン）は、母親にかまってもらえず孤独な日々の中で、テシクを「アジョシ（おじさん）」と呼んで慕っていた。そんなある日、犯罪組織から麻薬を盗み出した母親とともに、ソミは誘拐されてしまう。彼女を救おうとしたテシクは、組織の罠にはまって警察に逮捕されてしまうものの、驚異的な戦闘能力で脱出し、必死でソミの行方を追うのだが……。
＜レビュー＞
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過去のある男と少女の孤独な魂のふれあいが心にしみる
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タイトルの「アジョシ」は韓国語で「おじさん」。おじさんというにはちょっと若いウォンビンが、前作『母なる証明』に続いて新境地を見せるアクション・サスペンスです。
冒頭は、事件の発端となるクラブでの麻薬取引シーン。そこで組織の麻薬を横取りするダンサー。
続いて登場するのは、ウォンビン演じる主人公テシク。過去のある事件がきっかけで、人目を避けるようにして細々と質屋を営んでいる。そんな彼を慕うのが隣家の少女ソミ。彼女は、母親に構ってもらえず孤独な日々を送っていた。その母親とは冒頭で麻薬を横取りしたダンサー。
まもなく、組織は母親とソミを拉致し、テシクの質屋からソミの母親が質に入れた麻薬を隠したカバンを奪う。
その後、組織の罠にはまって警察に捕まるテシク。だが、そこから脱出すると必死でソミの行方を探す……。
前半は、どちらも孤独を抱えたテシクとソミの心の交流が繊細に描かれます。無愛想なテシクは、迷惑そうにしながらも、チラリとソミへの思いやりや優しさを見せます。その絶妙な距離感が、ドラマ全体を説得力のあるものにしています。
中盤以降は、テシクがソミを救出するために、組織と容赦ない戦いを繰り広げます。テシクが実は元特殊部隊員という設定をはじめ、ストーリー展開はけっして目新しいものではありません。しかし、異様な緊張感と熱気がスクリーンを覆い、まったく目が離せません。
全編に渡って、テシクとソミの心情がリアルに伝わってきます。表情やしぐさを中心に描かれる心理描写が見事。ソミが生きているらしいとわかった時のテシクの喜びの表情、目玉を見せられた時のテシクの怒りとショックの表情、テシクに裏切られたと思ったソミの寂しそうな表情などなど……。
かなりのバイオレンスシーンも登場。しかし、テシクを突き動かす心理がきちんと伝わるので、違和感はありません。過去の忌まわしい記憶を持つ彼にとって、組織との戦いは、大切なものを奪った者への復讐でもあるのでしょう。
格闘シーン、銃撃戦、カーチェイスなどアクションもテンコ盛り。凄みや狂気を感じさせる悪役たちも出色。エンターティメントとしての魅力は十分です。
話の結末はありがちで、あまりにもご都合主義。しかし、それなのに、テシクとソミの気持ちが痛いほど伝わってきて、不覚にも涙してしまいました。ああ、最初で最後の抱擁！
ウォンビンの熱演はもちろん素晴らしいのですが、ソミ役のキム・セロンの圧倒的な存在感を忘れてはいけません。『冬の小鳥』で初めて観た時に、「なんだこの子は！」と驚かされましたが、やっぱりスゴイ。もはや子役の域を脱しています。不幸に打ちひしがれるのではなく、毅然と立ち向かう姿が絶品です。「１人で生きていくんだ」というテシクの言葉にうなずくその表情の美しさよ……。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年9月17日（土）丸の内TOEIにて。午後1時55分の回
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