あぜ道のダンディ


(2011年 日本)(上映時間1時間50分)
監督・脚本:石井裕也
出演:光石研、森岡龍、吉永淳、山本ひかる、染谷将太、綾野剛、螢雪次朗、
藤原竜也、岩松了、西田尚美、田口トモロヲ
*テアトル新宿ほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://www.bitters.co.jp/azemichi/
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<ストーリー>
宮田淳一(光石研)は、早くに妻を亡くし、浪人中の息子・俊也(森岡龍)と
高校3年の娘・桃子(吉永淳)を男手ひとつで育ててきた。だが、今や子供た
ちとは、まともな会話もできないギクシャクした関係にあった。そんなある日、
宮田は胃の痛みを感じて、妻と同じ胃ガンではないかと疑う。子供には話せず、
中学時代からの親友・真田(田口トモロヲ)に胸の内を明かす宮田。まもなく、
俊也と桃子は揃って私大に合格し、春から家を出て東京で新生活をスタートさ
せることになるのだが……。

<レビュー>
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ダメダメな中年オヤジの奮闘ぶりに共感
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前作『川の底からこんにちは』で注目を集めた(ついでに主演の満島ひかりと
結婚した)石井裕也監督が、日本映画の名脇役・光石研を主演に迎えて撮った
映画(『博多っ子純情』以来約32年ぶりの主演とか)。

妻に先立たれて2人の子供を育てる主人公の宮田。2人は東京の大学に合格す
るが、親子の間はギクシャク。そんな中、宮田は自分が妻と同じく胃ガンでは
ないかと疑い、中学以来の親友の真田に打ち明ける……。

現在50歳。配送の仕事をするものの、けっして裕福ではない。妻は亡くなり、
子供はろくに口もきいてくれない。自分を"後方待機"の競走馬に見立ててムチ
を入れる……。そんな宮田は、まさにイケてないオヤジ。中学時代に親友の真
田とともに、「ダンディな男になろう」と誓ったのも遠い昔のことです。

この映画では、特別に大きな出来事は起きません。自分の現実に苛立ち、焦り、
やるせなさを感じながらも、何とかして子供たちとの家族の絆を取り戻そうと
奮闘する宮田を、温かでユーモラスな視点で描きます。

そこで重要な役割を果たすのが親友の真田。宮田に怒鳴られ、愚痴を聞かされ
る彼が、宮田と子供たちとの触媒になります。

『川の底からこんにちは』では、オフビートな笑いが炸裂させた石井監督。今
回はやや控えめながら、不思議なおかしさがあちらこちらに。子供と対戦ゲー
ムをしようと思った宮田が購入したのは、違う機種のゲーム機だったり。ゴル
フなどしないのに、なぜかスイングの練習をしたり。笑いどころは今回も満載
です。

そして秀逸なのがクライマックス。宮田の夢のシーンで、みんながウサギのダ
ンスを踊ります。ほほえましくて、おかしくて、心温まるシーンです。

宮田のようなオヤジは、どこにでもいます。この映画は、彼らよりはるかに若
い石井監督(28歳)のオヤジたちへの応援歌なのでしょう。

奮闘する宮田や真田に、観客は間違いなく共感するはず(特に同世代の観客
は)。さらに、本当は父親に感謝しつつも口に出せずにいる宮田の子供たちの
心情もきちんと描かれているので、観客は彼らにも共感できそうです。息子や
娘なら、誰でも親に抱く感情ですから。

『川の底からこんにちは』ほどの突き抜け方がないのが拍子抜けではあるもの
の、その分、登場人物の心理がじっくりと描かれて、人間ドラマとしての中身
は濃くなっています。主演の光石研に加え、田口トモロヲ、螢雪次朗、岩松了、
西田尚美、さらには藤原竜也もチョイ役で出演。そんなキャストも含めて、石
井監督の着実な成長ぶりが感じられる一作です。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2011年6月19日(日)テアトル新宿にて。午後4時30分の回


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