ブラック・スワン(BLACK SWAN)


(2010年 アメリカ)(上映時間1時間48分)
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、バーバ
ラ・ハーシー、ウィノナ・ライダー
*TOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開
ホームページ http://movies2.foxjapan.com/blackswan/
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<ストーリー>
ニューヨークのバレエ団に所属するニナ(ナタリー・ポートマン)は、元ダン
サーの母親の期待を背負い、バレエに全てを捧げる人生を送っていた。そんな
彼女に、「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが巡ってくる。「白鳥の湖」
のプリマは、純真な白鳥役と邪悪な黒鳥役を同時に演じなければならないが、
優等生タイプのニナにとって黒鳥役は大きな負担となる。そんな彼女の前に、
新人ダンサーのリリー(ミラ・クニス)がライバルとして現われる。彼女の台
頭によって、ニナは精神的に追い詰められていくのだが……。

<レビュー>
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リアルすぎる痛さと怖さ。バレエダンサーを描いたサイコ・スリラー
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映画の冒頭に登場するのは、美しいバレエシーン。これを観て、華麗なバレエ
映画やダンサーの成長物語を期待してはいけません。何しろ監督はあのダーレ
ン・アロノフスキー。『レクイエム・フォー・ドリーム』でヤク中の男女を、
『レスラー』で落ち目のプロレスラーをリアルに描いたのと同じように、バレ
エダンサーの狂気を赤裸々に描いているのですから。

主人公は、バレエにすべてを捧げるダンサーのニナ。所属するバレエ団でス
ターダンサーが引退し、「白鳥の湖」のプリマに抜擢されるものの、そこには
大きな課題が。優等生の彼女にとって白鳥役は問題ないが、同時に演じる黒鳥
役は難役。そんな悩みを抱える彼女の前に現れたのが、新人ダンサーのリリー。
ライバル出現によって、ますます精神的に追い詰められていくニナ……。

舞台となるのは、野心と嫉妬渦巻くバレエ団。そして登場するのは、いずれも
風変わりというよりは、かなり危ない人たちばかり。芸術監督のルロイは、ニ
ナが黒鳥役を演じるために「エロイ経験をしろ」などと言ってセクハラ指導を
する男。いかにも親切そうな新人のリリーは、実はすさまじい野心家で、クス
リなどのヤバい世界にニナを誘い込みます。そして、元ダンサーのニナの母親
は、過去の挫折が心の傷になり、娘を病的なまでに溺愛しています。

そんな中、一見純真でまっすぐなようなニナにも、実は秘密があったりするか
らさあ大変。

ニナがプリマに抜擢され、苦しみながらもレッスンを続ける前半はやや抑え目
な演出。それでも、ところどころにヒリヒリするようなシーンが登場します。
特に目立つのが痛い描写。超アップなどを使って、登場人物の痛さや辛さを見
せつけます。華麗なはずのダンスもアロノフスキー監督にかかれば、壮絶なパ
フォーマンス。

そして圧巻なのが後半です。黒鳥役を演じるプレッシャーと、自分とは対照的
な官能的なリリーとの競争の中で、どんどん追い詰められて狂気に走っていく
ニナの姿が、これでもか!とばかりに容赦なく描き出されます。現実なのか、
はたまたニナの幻覚によるものなのか、曖昧なシーンが続出。『レクイエム・
フォー・ドリーム』で登場人物がヤクに溺れていくのと共通するタッチで、ニ
ナの内面世界の狂気をあぶりだしていきます。

その痛さや怖さ、アブナさときたらハンパではありません。ここに至って、映
画は完全にサイコ・スリラーの世界へと突入です。

クライマックスは初日の公演。そこで起きる信じられないような出来事。バレ
エがみんなあんなに壮絶だったら、誰もバレエダンサーになどならないでしょ
う(笑)。

この映画でアカデミー主演女優賞を獲得したナタリー・ポートマンの鬼気迫る
渾身の演技に加え、ヴァンサン・カッセルの嫌らしさや、ミラ・クニスの危険
な女ぶりも見事。

あまりの凄まじさに一瞬も目が話せなかったサイコ・スリラー。観ておく価値
は十分にありますが、あと味の良い映画ではないのでご注意を。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆(+1/2★)
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2011年5月13日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分の回


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