ブンミおじさんの森
(UNCLE BOONMEE WHO CAN RECALL HIS PAST LIVES)


(2010年 イギリス・タイ・フランス・ドイツ・スペイン)(上映時間1時間54
分)
監督・脚本:アピチャッポン・ウィーラセタクン
出演:タナパット・サイサイマー、ジェンチラー・ポンパス、サックダー・ケ
ァウブアディー、ナッタカーン・アパイウォン
*シネマライズほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://uncle-boonmee.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

<ストーリー>
タイ東北部のある村で暮らすブンミ(タナパット・サイサイマー)は、腎臓の
病気で余命わずかだった。ある日、彼は自分の農園に妻の妹のジェン(ジェン
チラー・ポンパス)を呼び寄せる。すると、19年前にこの世を去った妻の霊が
食卓に現れ、さらに行方不明だった息子も不思議な生き物となって現われる。
やがて、ブンミは彼らとともに深い森へ入っていくのだが……。

<レビュー>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ティム・バートンをうならせた、あまりにも風変わりなファンタジー
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

2010年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールに輝いたタイのアピチャ
ッポン・ウィーラセタクン監督のファンタジー映画。

この時、審査委員長を務めたのは、あのティム・バートン監督。「彼が審査委
員長でなければ、これほどの高評価は得られなかったのでは?」と思わせるよ
うな、あまりにも風変わりな映画です。

ドラマらしいドラマはありません。腎臓の病気で死期が近いブンミおじさんが、
自分の農園に亡くなった妻の妹を呼びます。すると、まもなく彼らの食卓に、
妻の霊が現われ、さらに行方不明になっていた息子が、猿の精霊になって現わ
れます。

死者の霊や精霊は、ごく普通の登場人物のように現われて、ごく普通に振る舞
います。CGなどの映像的なテクはまったくなし。それに対する人間たちも、最
初に少し驚くぐらいで、あとは普通に接します。いったいこれは何なんでしょ
う?

中盤には、謎の女王が登場して、水の中でナマズとエッチなことをします。こ
れも、何を意味しているのかよくわかりません。

どうやらこの映画のテーマは、仏教的世界を背景にした前世や来世、輪廻転生
といった死生観のようです。しかし、私のような凡人には、それ以上はサッパ
リです。まあ、明確なメッセージを打ち出すのではなく、観客それぞれに自由
に考えさせるのが狙いなのだとは思いますが。

後半に進むにつれて、ますます観念的な雰囲気が漂います。死期が近づいたブ
ンミおじさんが、みんなと一緒に洞窟に入っていきます。そこで登場する意味
深な写真(過去?未来?)、彼が話すこともわかるようなわからないような…
…。

後日談も難解です。葬式のシーンはともかく、その後のホテルでの出来事はい
ったい何? やはり前世や来世と関係あるのでしょうか。私のような鳥頭には
理解不能です。

とはいえ、気づけば、最後まで飽きることなく観てしまいました。それという
のも映像が素晴らしいから。深遠な森のようす、この世のものとは思えない美
しい滝と池、洞窟と星空など、もはや芸術の域に達しています。

そして、予想もしない生き物や、常識ハズレの構図の出現なども、「なんだア
レ?」と目を釘付けにさせられた要因。猿の精霊なんて、完全に『猿の惑星』
の猿ですもの。

深遠なテーマを描いているのは何となくわかったものの、それ以上は理解不能。
しかし、ティム・バートンも言ったように、これほどサプライズに満ちた映画
はめったにありません。そういう意味で、一見の価値はあるでしょう。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2011年3月21日(月・祝)シネマライズにて。午後2時50分の回


[「ふ」のページ]