|
カンパニー・メン（THE COMPANY MEN）
（2010年 アメリカ）（上映時間1時間44分）
監督・脚本：ジョン・ウェルズ
出演：ベン・アフレック、クリス・クーパー、ケヴィン・コスナー、マリア・
ベロ、ローズマリー・デウィット、クレイグ・Ｔ・ネルソン、トミー・リー・
ジョーンズ
＊ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://companymen-movie.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
ボストンの大企業ＧＴＸに勤めるエリート・ビジネスマンのボビー・ウォー
カー（ベン・アフレック）。妻と２人の子供たちと幸せな毎日を送っていたが、
ある日、突然リストラされてしまう。すぐに再就職できると考えていたボビー
だが、プライドの高さも災いして思うようにいかない。どうにもならなくなっ
た彼は、工務店を営む義兄（ケヴィン・コスナー）に頭を下げ、一度は断った
肉体労働に汗を流す。そんな中、ＧＴＸでは再びリストラの嵐が吹き荒れ、２
人の重役ジーン（トミー・リー・ジョーンズ）とフィル（クリス・クーパー）
もクビになってしまう……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
リストラにあった男たちのドラマ。現在のビジネス界に対する批判も
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
リストラにあった男たちを描いた人間ドラマ。監督・脚本のジョン・ウェルズ
は、長編映画は初監督ですが、『ＥＲ 緊急救命室』や『ザ・ホワイトハウ
ス』などの大ヒットテレビドラマを手がけてきただけに、味わいのある作品に
仕上がっています。
冒頭に登場する主人公のビジネスマンのボビー。入社以来、順風満帆な毎日を
送る彼は、ゴルフのスコアの話をしながらお気楽に出社。ところが、直後に思
わぬリストラ宣告。おりからのリーマン・ショックを受けて、勤務先が大規模
なリストラを断行したのだった……。
というわけで、30代半ばでリストラされてしまったボビーの挫折と再起の物語
が、ドラマの柱です。
さらに、同じ会社の２人の重役ジーンとフィルのドラマも並行して描かれます。
会社の創設者の１人で、リストラに反対するジーン。現場からのたたき上げで
出世したフィル。２人とも会社の現状を強く危惧しています。
リストラされても「どうせすぐに再就職できる」と高をくくっていたボビー。
しかし、会社の再就職支援はおざなりなもの。おまけにボビーのプライドの高
さも災いして、なかなか就職先が決まりません。
お金もなくなり、家を手放すハメになったボビー。それでも、彼を必死で支え
る妻や子供たち。ここに至って、ついにボビーもプライドを捨てて、義兄に頼
み込んで一度は断った大工仕事を始めます。
一方、会社ではさらにリストラが行われ、ジーンとフィルもクビになってしま
います。こうしてリストラに翻弄された３人の男たち。そして起きる大きな悲
劇……。
この映画の大きな特徴は、ドラマの背景としてアメリカの経済界の現状に対す
る問題提起が、さりげなく行われているところです。社員よりも株主を大事に
し、すぐにリストラに走るくせに、自分たちは信じられないような高額な報酬
を受け取っている経営者たち。そんな病的な状況がクッキリと浮き彫りになっ
ています。
オスカー俳優陣を配したキャストの絶妙さも、この映画の魅力。主人公のボ
ビーを演じるベン・アフレックは、一時は大スターになりかけたものの、その
後はやや失速（最近は自身の監督主演作『ザ・タウン』などで、再び存在感を
発揮していますが）。そんな境遇とリンクして、なおさらリアルに感じられる
演技です。
ベテランのクリス・クーパー、トミー・リー・ジョーンズの演技も出色。セリ
フだけでなく、背中に哀愁を漂わせる演技は名優ならでは。ケヴィン・コス
ナーをブルーカラーの苦労人に起用したのも見事なキャスト。
ラストではかすかに希望の火を灯します。現実はこんなに甘くないかもしれま
せんが、それでも好感の持てる後味のよい結末です。
奇策を用いることなく、正攻法かつ真摯に描かれた佳作。日本人にとっても他
人事でないテーマだけに、観る価値は十分にあります。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年9月24日（土）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後2時15分の回
[「か」のページ] |