|
デンデラ
（2011年 日本）（上映時間1時間58分）
監督・脚本：天願大介
出演：浅丘ルリ子、倍賞美津子、山本陽子、草笛光子、山口果林、白川和子、
山口美也子、角替和枝、田根楽子、赤座美代子
＊新宿バルト9にて全国公開
ホームページ http://dendera.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
70歳になった者は口減らしのために山奥に捨てられる掟を持つ村で、斎藤カユ
（浅丘ルリ子）が捨てられる。死を覚悟するカユだが、老婆たちによって助け
られる。彼女が連れてこられたのは、同じように捨てられた老婆たちがつくり
あげた"デンデラ"と呼ばれる共同体だった。デンデラの創設者でリーダーの三
ツ屋メイ（草笛光子）は、自分たちを捨てた村人への復讐を計画していた。カ
ユを加えてちょうど50人となった時、メイはついに計画を実行しようとするの
だが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
老婆集団ＶＳ熊。前代未聞（？）の怪アクション映画
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
年老いた村人を口減らしのために山に捨てるという姥捨て山伝説。それをテー
マにした映画『楢山節考』（1983年）でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞し
たのが、故今村昌平監督。その息子の天願大介が、姥捨て山のその後を描いた
佐藤友哉の同名小説を映画化したのが、この作品です。
70歳になって掟に従い山に捨てられた老婆カユ。死を覚悟するものの、倒れて
いるところを謎の老婆たちに救われる。彼女たちは、カユと同様に山に捨てら
れた老婆で、30年前に捨てられた最長老のメイをリーダーに、「デンデラ」と
いうコミュニティーを作って生き延びていた。メイは自分たちを捨てた村への
復讐を企てるのだが……。
「デンデラ」はある種の理想郷です。村への復讐を企てるメイたち主流派と、
それに反対するメンバーとの対立などはあるものの、みんなで手に入れた食料
を平等に分配して、助け合いながら暮らしています。
その根底にあるのは、男社会で貧富の格差の激しい村に対する批判。いわばデ
ンデラの存在そのものが、村に対するアンチテーゼといえます。
死ぬ覚悟をしていたカユは、そこに放り込まれ、初めは戸惑い、反発します。
はたして、彼女は復讐計画に加わるのか？ 本当に復讐は実行されるのか？
その結末は？
老いを嫌い、年寄りを邪魔者扱いする現代への世相批判にもつながりそうな、
深い展開のドラマを予想したのですが……。
結局、予想は裏切られました。いよいよ決行が近づいた頃から、なにやら雲行
きが怪しくなってきます。最初は熊の親子の襲撃。それに立ち向かう老婆たち。
完全なアクション映画に突入です。ただし、ぬいぐるみのクマくんとCGで描い
たアクションシーンは、かなりチープな感じ。それでも、浅丘ルリ子はじめ日
本映画を代表するベテラン女優陣が披露する、極寒の雪山での激しいアクショ
ンが目を引きます。
その後に彼女たちを襲うのは雪崩！ そして、後半は再びクマとの対決！ 老
婆ＶＳ子供を殺された熊との死を賭けたバトルが続きます。最初は死ぬつもり
だったカユが、様々な出来事を通して生へベクトルを向けていくのが印象的。
あれ？ でも村への復讐計画はどうなったの？
というわけで、予想とはかなり違う展開になりましたが（どうも原作も熊との
バトルが大きなポイントらしい）、生きることにこだわる老婆たちの執念には
圧倒されるばかり。年齢を超越したような奮闘ぶりには、同世代のみならず拍
手を送りたくなるでしょう。
ベテランの名優がアクションをしてはいけない法律があるわけではなし、こう
いう大胆な映画がもっとあってもいいのではないでしょうか。
主演の浅丘ルリ子に加え、草笛光子、倍賞美津子、山本陽子、山口美也子ら女
優陣の過去のキャリアにこだわらない大熱演だけでも、見応えのある映画でし
た。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年6月26日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時の回
[「て」のページ] |
|