ゴーストライター(THE GHOST WRITER)


(2010年 フランス・ドイツ・イギリス)(上映時間2時間8分)
監督:ロマン・ポランスキー
出演:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、オリ
ヴィア・ウィリアムズ、トム・ウィルキンソン、ティモシー・ハットン、ジョ
ン・バーンサル、デヴィッド・リントール、ロバート・パフ、ジェームズ・ベ
ルーシ、イーライ・ウォラック
*ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて
全国公開
ホームページ http://www.ghost-writer.jp/
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<ストーリー>
英国の元首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自伝執筆を依頼され
たあるゴーストライター(ユアン・マクレガー)は、気乗りしないままにラン
グの滞在するアメリカ東海岸の孤島を訪問する。そこでラングを取材しながら
原稿を書き進めるゴーストライターだが、次第にラングの過去に疑問を持つ。
さらにフェリーから転落死したという彼の前任者の死のナゾを探るうちに、不
可解な出来事に巻き込まれていく……。

<レビュー>
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ポランスキーの職人芸が光る良質のサスペンス・ミステリー
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『チャイナタウン』『戦場のピアニスト』の名匠ロマン・ポランスキー監督が、
ロバート・ハリスの同名小説を映画化。第60回ベルリン国際映画祭銀熊賞(最
優秀監督賞)を受賞しました。

あるゴーストライターが、イギリスの元首相ラングの自伝執筆を依頼される。
前任者は謎の死を遂げていた。ラングの滞在する孤島で取材しながら原稿を書
くが、そのうちに不可解なことが起き始める。その間、ラングにはイスラム過
激派のテロ容疑者への拷問の疑いがかかる。ラングの過去に疑問を持ったコー
ストライターは、前任者のナゾの死に行き当たり、その真相を追求するのだが
……。

ストーリー自体はよくある巻き込まれ型のサスペンス・ミステリー。元首相ラ
ングのモデルが明らかにトニー・ブレアだという話題性はあるものの、けっし
て物珍しい話ではありません。しかし、ポランスキー監督の職人芸によって、
見応え満点の映画に仕上がっています。

まず感心するのが、不気味でスリリングな雰囲気の作り方。冒頭のフェリー船
上でのシーンや、その後の砂浜の死体のシーンから、すでに観客の心をざわつ
かせます。その後も、孤島の鉛色の空、荒れた海、寒々とした雨などが効果的
に使われ、ドラマ全体を重苦しく緊張感の漂うムードが覆います。ミステリア
スな音楽の使い方も印象的。

その中で主人公と彼を取り巻く怪しげな人々の人物像が、過不足なく描き出さ
れます。元首相のラング、ラングの妻、専属秘書、大学時代の知人らしき大学
教授、ラングに更迭された元閣僚などなど。ラングと妻との微妙な関係なども
的確に描かれ、ナゾと不安をますます大きくしていきます。セリフの面白さも
含めて絶妙の語り口です。

前半に少しずつばら撒かれたナゾが、中盤でどんどん膨らんでいきます。主人
公とラングの妻との危険な関係にも、単なる男女関係を超えた何かを感じさせ
ます。

そして後半、主人公がカーナビの指示によってある場所に導かれるシーンから、
ドラマの展開はテンポアップしていきます。何者かに尾行される主人公。息詰
まるような展開が続きます。

そして、空港で起きる大事件を経て、ついに解明される事実。人々の間を真相
が書かれたメモが渡っていくシーンが秀逸。最後の最後に主人公の身に起きた
出来事を、画面の死角で描くラストシーンまで、まったく緊張感は途切れませ
んでした。

主演のユアン・マクレガーに加え、ラング役のピアース・ブロスナン、その妻
のオリヴィア・ウィリアムズ、秘書役のキム・キャトラルなど脇役も充実。

ヒッチコック作品を連想させるようなテーストもある、良質なサスペンス・ミ
ステリー映画です。久々に本格派の映画を観たような気がしました。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆

≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2011年8月28日(日)ヒューマントラストシネマ渋谷にて。午後1時30分の回


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