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朱花（はねず）の月
（2011年 日本）（上映時間1時間31分）
監督・脚本・撮影・編集：河瀬直美
出演：こみずとうた、大島葉子、明川哲也、麿赤兒、小水たいが、樹木希林、
西川のりお、山口美也子、田中茜乃介
＊ユーロスペースほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://www.hanezu.com/
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＜ストーリー＞
染織家の加夜子（大島葉子）は、地元ＰＲ誌編集者の恋人哲也（明川哲也）と
長年暮らしていた。だが、木工作家の拓未（こみずとうた）を好きになり、彼
の子を身ごもる。そのことをきっかけに、３人の日常は大きく変化していく…
…。
＜レビュー＞
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１人の女を争う２人の男。奥深く静謐な河瀬監督の世界
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2007年のカンヌ国際映画祭で審査員特別大賞（グランプリ）を受賞した『殯
（もがり）の森』や『萌の朱雀』などで知られる河瀬直美監督の作品。本作も
カンヌのコンペティション部門に正式招待されました。
核となるストーリーは１人の女を巡って２人の男が争うという恋愛模様。ＰＲ
誌編集者と長く一緒に暮らす主人公が、木工作家の男を好きになり、妊娠して
しまったことから、彼らに大きな変化が起きます。
ストーリーだけ見ればドロドロの愛憎劇のようですが、それとはまったく違う
世界。激しい場面も多少はあるものの、基本的には静かで穏やかな世界。過剰
な演出を排して、ドキュメンタリータッチで、淡々と描いています。
舞台となるのは奈良・飛鳥地方。神々が宿るとされる香具山、畝傍山、耳成山
の大和三山を男女に見立てた万葉集の歌が、劇中で何度か登場します。古代か
ら今に至るまで変わらない、人間の本質を感じさせます。
人間たちを包む大自然の風景、染色や木工の工程、遺跡発掘現場のベルトコン
ベヤーなどの描写も、単なる男女の三角関係を超えた深みを生み出しています。
人間と自然の関係、人と人との絆、多くの人々の魂が作り上げてきたこの世界
……。
奥深く、静謐で、時には激しさも持つ独特の河瀬監督の世界。さすがにカンヌ
をはじめ国外で高く評価されるだけのことはあります。
ただし、個人的にはどうも入り込めない世界です。何よりも核になる３人の男
女のドラマが心に響きません。１人の女を２人の男が奪い合う万葉集の歌が登
場するにも関わらず、実際のドラマでは奪い合いはまったくナシ。彼らが背負
ったものもよくわからないし、心の葛藤も見えにくいので、そのまま素通りし
てしまいます。
ラスト近くのＰＲ誌編集者の行動も唐突過ぎます。主人公が魅せられる朱花と
いう真紅の色と、血の色を重ね合わせたかったのでしょうか。まあ、確かに映
像的には見事ですが。
現在進行形のドラマに突然、木工作家の戦死した祖父などが登場するのも、違
和感ありすぎでついていけませんでした。
というわけで、個人的には好みではないものの、河瀬監督独特の世界が存分に
繰り広げられているのは確かです。過去の作品が好きな方は、満足できるので
はないでしょうか。
キャストについては、演技経験の浅い人物を重要な役どころに配しつつ（ＰＲ
誌編集者役の明川哲也は、かつてドリアン助川としてロックバンド「叫ぶ詩人
の会」で活躍していた人）、ベテランの実力者を脇役に起用した味のある配役
でした。
≪ぽちの満足度≫
★★☆☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★☆☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年9月4日（日）ユーロスペースにて。午後3時の回
[「は」のページ] |
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