ハラがコレなんで


(2011年 日本)(上映時間1時間49分)
監督・脚本:石井裕也
出演:仲里依紗、中村蒼、石橋凌、稲川実代子、並樹史朗、竹内都子、大野百
花、近藤芳正、螢雪次朗、瀧川鯉昇、戸次重幸、森岡龍、斉藤慶子
*渋谷シネクイントほかにて全国公開
ホームページ http://harakore.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

<ストーリー>
妊娠9ヵ月の原光子(仲里依紗)。お腹の子の父親と別れてアメリカから帰国、
所持金も底をつき、住む場所もなくなった彼女は、昔住んだ長屋にたどり着く。
光子は身体の弱った大家・清(稲川実代子)の世話をしながら、幼なじみの陽
一(中村蒼)が叔父と一緒に営む食堂を手伝い始めるのだが……。

<レビュー>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ハジケたキャラの主人公を見ているうちにみんなが元気になれる映画
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『川の底からこんにちは』『あぜ道のダンディ』と、ダメダメ人間の一発逆転
のコメディー映画を生み出してきた石井裕也監督の新作です。

アメリカで妊娠したものの、男に捨てられてひっそり帰国した妊娠9ヶ月の光
子。金も住む場所もなくなった彼女がたどり着いたのは、少女時代に住んだこ
とのある人情長屋。そこに住み着いた光子は、自分のことはさて置いて、せっ
せと人助けに精を出す。体の弱った大家の世話をし、幼なじみが叔父とともに
経営するさびれたレストランを手伝い始め……。

主人公・光子のキャラクターがユニークです。「OK、大丈夫」が口グセで、
行動基準は「粋か」「粋じゃないか」のみ。うまくいかない時には、雲を見つ
めて風向きが変わるのを待ち、自分のことはそっちのけで、他人の面倒を見る。
なんだか、フーテンの寅さんの女版のようでもあり、『川の底からこんにち
は』の満島ひかり演じる主人公に似た雰囲気もあり……。

ひたすら楽天的で明るく、思い込みだけで人助けに走る彼女を見ているうちに、
こちらも明るい気持ちになってきます。現実には絶対にお目にかかれない人物
ですが、それだけに破天荒で不思議な魅力に満ちています。

石井監督のちょっと人を食ったような笑いのセンスも健在。突然昼寝をするク
セがあるなど、光子のユニークなキャラを生かして楽しい笑いを振りまきます。

光子に加え、妖怪じみた大家の清、幼なじみの陽一、その叔父と彼が思いを寄
せる喫茶店のママなど、脇役のキャラも魅力的。

後半は、いよいよ出産間近の光子の身に新たな問題が。陽一の叔父と喫茶店の
ママとのロマンスを絡めた、光子の猪突猛進劇へとなだれ込みます。今回は一
発逆転はありませんが、光子をはじめ周囲の人々の明るい未来を予感させるエ
ンディングです。

それにしても、出演作ごとにまったく違う魅力を見せる仲里依紗の奥の深さに
は、感心させられるばかり。今回も新たな魅力がタップリです。

前2作以上にファンタジー的な色彩が強いだけに、リアリティーはあまりあり
ませんが、その分、誰でも楽しく愉快になれるコメディーです。今回を含めた
3作で、すっかり石井ワールドを確立した感のある石井監督ですが、はたして
今後はどうなるのか。ちょっと違う側面も見たくなったりして……。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2011年11月19日(土)新宿武蔵野館にて。午後2時の回


[「は」のページ]