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光のほうへ（SUBMARINO）
（2010年 デンマーク）（上映時間1時間54分）
監督・脚本：トマス・ヴィンターベア
出演：ヤコブ・セーダーグレン、ペーター・プラウボー、パトリシア・シュー
マン、モーテン・ローセ
＊シネスイッチ銀座ほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://www.bitters.co.jp/hikari/
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＜ストーリー＞
デンマーク・コペンハーゲン。アルコール依存症の母親に代わって、赤ん坊の
面倒を見る幼い兄弟。だが、赤ん坊は突然死んでしまう。兄弟は心に深い傷を
抱えたまま成長する。やがて大人になった兄ニック（ヤコブ・セーダーグレ
ン）は、刑務所を出所して宿泊施設で暮らし、苦悩の日々を送っていた、一方、
疎遠となっていた弟（ペーター・プラウボー）は妻を交通事故で亡くし、幼い
息子と２人暮らし。息子を愛するものの、麻薬と縁が切れなかった。そんな中、
母親の死をきっかけに兄弟は再会するのだが……。
＜レビュー＞
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心に傷を負った兄弟の苦悩に満ちた人生
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デンマークの２人の兄弟の苦悩に満ちた人生を描いたヒューマンドラマ。監督
は『セレブレーション』『DEAR WENDY ディア・ウェンディ」などのトマス・
ヴィンターベア。
冒頭は赤ん坊の面倒を見る幼い兄弟。アルコール依存症で育児放棄の母親に代
わって、弟の世話をします。だが、まもなく赤ん坊は突然死亡。責任を感じた
兄弟は、心に傷を追ったまま成長します。
その後は、大人になった兄弟が描かれます。最初は兄。刑務所から出所し、宿
泊施設で暮らすもののつらい毎日。ジムで体を鍛えることしかやることがなく、
隣の部屋の女といい加減な関係を持ったりしています。そして、やがてとんで
もない事件に巻き込まれます。
続いて描かれるのは弟のほう。妻が交通事故死し、幼い息子の面倒を見て可愛
がるものの、麻薬にどっぷり浸かって抜けられません。
兄も弟も、どちらも幼少時代の心の傷がクッキリと見える人生です。出口のな
い袋小路のどん詰まり。けっして仰々しい描き方はしていませんが、だからこ
そよけいに彼らの傷の深さが伝わってきます。演じる２人の役者の険しい表情
が、なおさら彼らの苦悩を浮かび上がらせます。
やがて兄弟は母親の葬儀で久々に再会します。兄は母の遺産を放棄して全額弟
にやると言います。一方、弟はもっと金を稼ごうと、麻薬の密売に深くはまっ
ていきます。そして起きる大きな悲劇……。
途中までは、あまりの閉塞感に息苦しささえ感じてしまう映画です。ありきた
りの救いなどはありません。押しつけがましい感動もありません。
それでも、終幕近くの葬儀シーンと、弟の息子の命名のエピソード（冒頭のエ
ピソードとつながる）が、かすかな希望の光を灯してくれます。けっしてあと
味は悪くありません。
デンマークのことはよくわかりませんが、この映画から察するにアルコール依
存症や麻薬中毒、児童虐待（育児放棄を含む）などが、大きな社会問題になっ
ていることがうかがえます。それらはけっしてデンマークだけでなく、広く現
代社会に通じるテーマでしょう。
２人の兄弟の生き様を通じて、そうした社会問題にも焦点を当てた見応え十分
のヒューマンドラマです。
後半冗長に思える部分がある半面、エンディング近くがバタバタした感じなの
と、人物の関係性がわかりにくい点がやや難点かも……。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年6月4日（土）シネスイッチ銀座にて。午後1時50分の回
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